2014年05月30日

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『はじめての認知療法』

はじめての認知療法 (講談社現代新書) 大野 裕

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『はじめての認知療法』

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。鬱病患者の家族のための本。

うつ・不安が軽くなる、こころが晴れるメソッドとは?

第一人者による認知療法入門書が登場!

「うつ状態になると、私たちは、何事も悲観的に考えるようになり、本来の自分の力を発揮できなくなります。

意識しないうちに、悲観的な自分の世界に入り込んでしまっています。

認知療法では、そうした悲観的な自分の世界から少し顔を上げて、現実に目を向けながら新しい考え方ができるように手助けしていきます」──本書より



自分の「こころのクセ」を知る。

気分と行動の悪循環から抜け出す。

呼吸法、睡眠法で身体をリラックスさせる。

―認知療法への待望の入門書。


認知療法を始めて1年半になります。

この間、いろい露な本を読み認知療法についてはだれよりもわかっているつもりでしたが、この本に出会って、改めてわかりました。

一応、入門編なんですけど、その域を超えて、鬱の人も、鬱でない人も読んでためになる本です。

ホントにお勧めです。

私は、アーロン・T・ベック先生、デビット・D・バーンズ先生の本を何回も読んで実践してきましたが、この800円くらいの大野裕先生の本が一番役に立ちました。




日本における「認知療法」の第一人者である大野先生の本です。

うつ病などの精神疾患に対して「認知療法(Cognitive Therapy)」がどのように適用されるのかを分かりやすく解説している、「認知療法」の入門書です。

200頁ほどで簡潔に、具体例を交えて分かりやすく書かれているので、私は、2日間で一気に読み終えてしまいました。

昔、本で読んで共感した「論理療法」に近いものだったので、個人的には素直に受け入れられました。

例えば、

同じ「事実」でも、人によって、そしてそのときの気持ちの状態によって違った形で解釈されることがあり、それに応じて、落ち込んだり不安になったり腹が立ったりという、違った気持ちになっていることがわかります。

自分が見ている「事実」が客観的な「真実」と違うからです。(この考え方は、認知療法においては重要なポイントだと思います…)

とか

問題を絞り込んだ後は、その問題に対してできるだけ多くの解決策を考えてください。

これを「数の法則」と呼びますが、多く考えれば考えるほど、解決につながる方法が含まれる可能性が高くなります。

そのときに、ばかばかしいと思うものも却下せず、とにかく多くの解決法を考えていくことが大事です。

とか



一度自分の頭を問題から解放して自由にすると、しばらくたって思いがけない解決策が頭に浮かぶことがあります。

私たちの頭には、そうした潜在能力があるのです。

といった考え方には、とても共感しました。

最新のビジネス書(洋書)においても、このような考え方が多く取り上げられていますので、精神疾患の治療法としてだけではなく、日常生活においても大いに活用できる考え方なのだと思います。そういった意味で、多くの人に読んでいただきたい本だと思いました。








posted by ホーライ at 00:55| 北京 ☀| うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の治療(5)

■■■■■■ うつ病の治療(5)  ■■■■■■


●日本におけるうつ病治療の現状


日本における現在のうつ病治療の中心は、薬物療法である。

日本うつ病学会では、厚生労働省からの依頼により、抗うつ薬の副作用をはじめとする薬物療法に関する諸問題を専門家の立場から検討し、適正な抗うつ薬使用法を提言するため、学会内に「抗うつ薬の適正使用に関する委員会」を2009年に設立している。


比較的最近、欧米を中心に気分障害に対する精神療法(認知行動療法、対人関係療法、問題解決療法等)や家族心理介入の有効性についてのエビデンスが次々と発表されるようになっており、日本でもデータの蓄積と薬物療法の限界が強調される傾向とがあいまって、必要性が見直されており、2010年の日本うつ病学会の提言では「薬物療法などの生物学的治療法と、精神療法などの心理学的治療法は車の両輪であり、両者がそろって初めて最適な治療となることは論を俟たない」と述べられている。

また、2012年の日本うつ病学会のガイドラインでも「認知行動療法あるいは対人関係療法と薬物療法を併用した場合は薬物療法単独に比べて再発予防効果が高いことが立証されている」と述べている。

また、不安障害、パーソナリティ障害の合併例では薬物療法に加えて精神療法の併用が勧められる。



上記提言によると、日本で心理療法が十分に行われていない理由としては、

1.認知行動療法ができる心理専門職の不足

2.患者数の著しい増加により、一人の患者に十分な時間がかけにくい

3.薬物療法が進歩した結果、患者・医師双方にとって複雑、時に難解で時間のかかる精神療法を行わなくても、薬の服用のみで十分という風潮が生じている

4.薬物療法に比べて、精神療法の有効性についてのデータが相対的に少なく、積極的な精神療法への動機付けが乏しい


などが挙げられ、その対策として、人材不足の解消、心理職の国家資格化、保険診療化などを提唱している。





●うつ病の予後

大うつ病は、治療の有無に関わらず時間が解決することが多い。

うつの外来患者リストの10 - 15パーセントは数ヶ月以内に減少し、約20パーセントはもはやうつ病基準を完全には満たさない。

エピソードの中央値は23週と推定されており、最初の3ヶ月間で回復する率が最も高い。


日本での研究では、6か月程度の治療で回復する症例が、50パーセント程度であるとされ、多くの症例が、比較的短い治療期間で回復する。

しかし、一方では20パーセント程度の症例では、1年以上うつ状態が続くとも言われ、必ずしもすべての症例で、簡単に治療が成功するわけではない。

また、一旦回復した後にも、再発しない症例がある一方、うつ病を繰り返す症例もある。

うつ病では海外諸国におけるうつ病の自殺率は、最近の報告では59/100,000と極めて低く推測されている。



●うつ病の再発率

研究では、初めて大うつ病を経験した人の80%が一生で1回以上の再発を経験し、その平均は4回であった。

他の一般的な調査では、約半数が治療を行ったかどうかに関わらず回復しているが、残りの半数は最低1回は再発し、およそ15%は慢性的な再発を繰り返す。

再発率は、うつを繰り返すたびに高くなる傾向にあり、初発の場合の次回再発率は50パーセント、2回目の場合75パーセント、3回目の場合は90パーセントにものぼる。




●うつ病の診療科・医療機関

うつ病は早期発見が重要なファクターだが、「心の変調」に自分(または周囲)が気づいた場合でも、どの医療機関を受診すれば良いのか分からず、近所の内科などにかかることも少なくなく、症状を進行させてしまう場合がある。

うつ病を適切に診断・治療する診療科は精神科・神経科・心療内科である。

なお、神経内科は神経専門の診療科なのでうつ病は扱わない。

ただし、近年は「精神科」と聞いて抵抗感を持つ患者や家族も少なくなく、そのため医院の屋号にこれらの診療科の名前を出さなかったり、「メンタルクリニック」「こころクリニック」の名前を使う医院も多い。


各自治体の保健所や精神保健福祉センターでは、無料かつ匿名で「心の変調」やメンタルヘルスの相談に応じ、医療機関も紹介してもらえる。

学生の場合は、児童相談所やスクールカウンセラー、保健センターなどでも良い。

意外に思われるかもしれないが、保健所の業務の6割は精神保健に関するものである。



●社会におけるうつ病

米国では、うつ病による経済損失は5兆円におよぶと試算されており、その内訳は生産性低下53%、医療費28%、自殺17%である。

うつ病は現在では一般に広く知れ渡っているが、以前は「怠け病」などと呼ばれていた。

現在でも、特に軽度のうつ病の場合、怠けているだけと思われることが多い。

「誰でもかかる可能性がある」「罹患し易い」ことを表した『うつ病は心の風邪』という言葉が、一部における「うつ病は放っておいても簡単に治る」という誤解に繋がっている。




●最近のうつ病のトピックス

2011年には、山形県鶴岡市にあるヒューマン・メタボローム・テクノロジーズおよび東京小平市の国立精神・神経医療研究センターが血液中のエタノールアミンリン酸で大うつ病を診断できると発表した。

同年、広島大学などの研究グループは、血液中のBDNF遺伝子のメチル化を調べることで大うつ病を診断できる可能性があると発表したが、臨床応用できる段階ではない。



今後、研究レベルでは、うつ病等の精神疾患を客観的に診断できるマーカーを探索するために、健常者および患者の血液を用いて、プロテオミクスあるいはメタボロミクスが積極的に行なわれると考えられる。

社会的に普及するかどうかは医療保険適応か先進医療か等の費用の程度が大きな問題である。

100%やそれに近い精度では診断できないため、慎重な運用が求められる。


また、現在のうつ病性障害関連の研究は、大うつ病のみが対象であることがほとんどである。
posted by ホーライ at 00:46| 北京 ☀| うつ病の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月23日

鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳』

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳』 大野 裕著

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。鬱病患者の家族のための本。



2010年1月15日 朝日新聞朝刊に「自分で学べる認知行動療法の本」として紹介されています。


本書は一般の人たちが認知療法を使ってストレスフルな人生を自分らしく幸せに生きていくことができるように工夫されたセルフワークブックである。

コンパクトなつくりで図表やイラストを多用し、分かりやすさに重点を置く。

認知療法を手軽に学びたいと思っている人たちにも役立つハンディで便利な一冊。



気持ちが沈んだり、ちょっと不安になったり、人間関係に悩んだり、自分を変えたいと思ったり…このノートはそんなあなたのやさしい味方です。

毎日すこしずつ読んですこしずつ書き込んでいくうちにあなたのものの見かたや考えかたが変わり、憂うつな気分や不安がしだいにほぐれていきます。



認知療法の本がずいぶん増えた。

分厚い本、小さな本、いろいろあるけど、第一選択は実はこの本だと思う。

まず薄い。そして字も少ない。そのくせ盛り込まれている技法はかなり多い。

そしてすぐに使える(コピーすれば何度でも使える)穴埋め式のチャートやコラム法の様式がてんこもりである。

いろいろ読んだけど、結局これをコピーして使うのが一番楽だった。

楽であればこそ、認知療法は始められるし、続けられる。



認知療法は本来うつ病やパニック障害に有効な治療法として有名なようですが、私自身の場合はマイナス思考にとらわれる考え方を少しづつ変えたくてこの本を手にしました。

書き込み式になっているのですが直接書くのがもったいなくて新たにノートを準備して日記代わりに自分の感情を分析しています。


本そのものも、字数が多くなく負担になりませんでした。

怒り、不安、悲しみ・・・・

文章にするといかにそういう感情にとらわれていたのかとてもよく分かります。

たとえばストレスが溜まったら日記をつけて思いっきり人の文句などを書きまくってる女性は多いと思うのですが(!?)一時的に気持ちはすっきりしても元になっている発想を転換していかない限りなかなか生きづらいと思うんです。

そんなときにこの本は力になってくれると思いますよ。



認知療法の解説本を数冊読んで見ましたが、その中ではこの本はページ数も少なく専門用語も使われておらず、読みやすい本だと思います。

認知療法全体的に言えることだと思いますが、認知療法を解説している本を使用して認知療法を自分1人で行えるのは、うつ病がかなり回復した状態、または、完治した人が再発予防のために使用できるのだと思います。

中度のうつ病の方は、患者さん1人で認知療法を始めるのは、ちょっとリスクを伴うと思います。

認知療法を行うことによって、逆に気持ちが落ち込んだりする恐れがあると思います。

もし、認知療法を試みてみたいと言う事であれば、主治医に相談してからの方が良いと思います。

更に重度のうつ病の方は、この様な解説本は見る気もしないのではないでしょうか。

もし、認知療法を試みるのであれば、患者さんが主体になるのではなく、主治医やカウンセラーが主体となって行う必要があると思います。



認知療法についての解説本は、書店へ行けば様々なものがりますが、結局、基礎になる考え方や治療で使用するワークノートは、同じようなものです。

認知療法は継続してこそ効果が出てくるのだと思います。






ラベル:認知行動療法
posted by ホーライ at 05:58| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『うつのセルフ・コントロール』

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。『うつのセルフ・コントロール』 ピーター・M. レウィンソン著

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。鬱病患者の家族のための本。

悲観的になり、悪循環から抜け出すためには自己管理が必要。

そんな思いから、この本を図書館の蔵書から検索して借りました。


アメリカの先生が20年前に書いた本の翻訳なのですが、現代の日本の文化でも十分通用する内容で、翻訳本と思えないぐらい、日本語訳がこなれています。


感情、試行、行動の関係を説いた「社会学習理論」も理解しやすく、豊富な具体例と、実践的な処方箋が与えられていて、最低でも、立ち直るきっかけになると思います。


一人で悩んでいる方には、ぜひお勧めします。つらい時に、期待以上の内容に巡り合えるでしょう。



最近うつ気味なので、図書館でたまたまこの本を借りてよんだところ、翻訳にもかかわらず、熊谷久代さんの翻訳が極めてすばらしく、まるで最初から練達の人が日本語で書いたかのような読みやすさでした。

外国の翻訳の場合、ひどい翻訳に辟易してしまい、投げ出してしまう事が最近多かったのですが、熊谷さんは最高の翻訳をしてくれました。

深く感謝します。

この本の内容は、うつの克服に有益な教えに満ちており、絶対おすすめです。










posted by ホーライ at 03:45| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の治療(4)

■■■■■■ うつ病の治療(4)  ■■■■■■


●読書療法

プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は、認知行動療法(CBT)を受けなくても、そのメリットの多くを得ることができる方法として読書療法を薦めており、臨床試験で良い結果が得られたものの中から2冊を紹介している。

『うつのセルフ・コントロール』(熊谷久代訳、創元社、1993年)、『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D・バーンズ、星和書店、2004年)はいずれも認知行動テクニックに関する本である。

『いやな気分よ、さようなら』の臨床試験では、短期的には、標準的なCBTを実際に受けた人のほうが改善の度合いが高かったが、3ヶ月後には同等になった。

3年間の追跡調査から効果が持続的であることも示唆されている。

注意点は、読書療法の臨床試験は中程度のうつ病のみを対象として行われたことである。

軽度〜中程度のうつ病であれば、代替法として妥当だが、重度のうつ病にはどのような効果を発揮するのか分かっていない。



●運動療法

貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、これらの社会的、状況的原因は薬によって変えることはできないが、薬で心理状況の改善はできる。

これらの社会的、状況的原因は変えることはできないが、この場合、運動などが有効である。

また、運動療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い。



1800年代初め、アメリカ合衆国で広く利用されたスコットランドの医師ウィリアム・バカン(William Buchan)の医学書『Domestic Medicine』は、憂うつの治療について、「患者はできるだけたくさん戸外で運動すべきである…こうした計画に食生活の厳格な節制を加えるなら、ただ患者を家の中に閉じ込めて薬漬けにするよりも、治療法としてはるかに理にかなっていると述べている。



2004年、英国国立医療技術評価機構(NICE)は「抗うつ薬はリスク便益比の観点から、軽度のうつの初期治療には推奨できないとしている。

寧ろ、医師は薬物以外の代替法を試し、「軽度のうつ病患者には年齢を問わず、構造化された指導付き運動プログラムのメリットを推奨すべきだとしている。



2007年、NICEのガイドライン(現在は失効)によれば、フィジカルトレーニングは軽度の抑うつ治療に推奨されるとされたが、2009年に改定されたガイドラインCG90からは削除されている。


2009年、イギリスの総合診療医(GP)の20%以上(2004年の4倍)が抑うつ症状の患者にしばしば運動療法を「処方」している。

短期的には、6週間以内に著しい改善があり、効果は大きく、抑うつ症状のある患者の70%が運動プログラムに反応したという研究報告がある。

長期的にも多くの副効果(心臓血管機能・認知機能・性的機能・筋力・社会性の向上、高血圧・睡眠の改善)がある。



2009年、プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は、運動にも心理療法や抗うつ薬と同等の効果があると紹介している。

薬物療法や心理療法ほど多面的な研究はなされていないが、効果を評価する臨床試験は沢山行われている。

主に中程度〜重度の症状に効果があり、定期的に続ける限り持続し、時間が経過すると効果が大きくなる。

さらに、疫学的研究から予防効果も示唆されている。運動の種類は「ウォーキング(有酸素運動)」「ウェイトトレーニング(無酸素運動)」など何でも良く、20分の運動を週3日行えば十分効果がある。

ただし、運動と抗うつ薬を併用するより、運動のみのほうが効果が高い。

臨床試験の欠陥を理由に運動の効果が否定されることがあるが、抗うつ薬の臨床試験にも欠陥が存在している。




重度のうつ病には運動でさえもおっくうで不可能な場合がある。

2012年、日本うつ病学会のガイドラインは「本来軽症に限った治療法ではない」と断った上で、軽症のうつ病への適用について、「運動を行うことが可能な患者の場合、うつ病の運動療法に精通した担当者のもとで、実施マニュアルに基づいた運動療法が用いられることがある。一方で運動の効果については否定的な報告もあり、まだ確立された治療法とは言えない」と述べている。

2013年、コクラン・ライブラリによれば、運動の効果は心理療法や薬物療法と同程度である。

なお、精神科に入院している患者は統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害が多く、うつ病は少ない。





●●●その他の治療法●●●

その他、限定的に行われる特殊な治療法や、実験的段階にあるものとして以下のようなものが挙げられる。


●電気けいれん療法 (ECT)・・・・・私の知り合いは、これで劇的にうつ病がよくなった。

頭皮の上から電流を通電し、人工的にけいれんを起こすことで治療を行う。

薬物療法が無効な場合や自殺の危険が切迫している場合などに行う。

最近は全身麻酔を使用した苦痛のない方法がとられることがほとんどである(そのため入院も可能な大病院でしかできない)。

安全管理も慎重に行われるようになった。

前述の場合に有効性が高い治療法であると考える臨床家も多く、保険診療でも認められている。

その一方で、薬物療法など他の方法が功を奏さない場合に限るとするなど慎重な適用を求めるものもいるほか、この治療そのものを勧めない精神科医もいる(電気けいれん療法#勧めない精神科医もいる参照)。



●経頭蓋磁気刺激法 (TMS)

頭の外側から磁気パルスを当て、脳内に局所的な電流を生じさせることで脳機能の活性化を図るもの。

日本では保険は未承認。

6週間治療での寛解率は27%程度、続く24週間治療での寛解率は50-60%程度。

副作用としては、刺激部位の痛みや不快感、頭痛など。



●断眠療法

うつ病患者が夜間眠らないことでうつ症状が急速に改善するという治療法である。

薬物治療への効果が乏しく、うつ状態が長く続いているような場合に施行される。

効果が持続しにくく、その場合、薬物療法や光療法を併用する。



●光療法

強い光(太陽光あるいは人工光)を浴びる治療法。過食や過眠のあることが多い、冬型の「季節性うつ病」(高緯度地方に多い冬季にうつになるタイプ)に効果が認められている。

冬季うつ病の第一義的な治療法は光療法とされ、抗うつ剤よりも有効性が高いことが確認されている。

また、光療法が非季節性のうつ病の治療に有効であることが実証された。

光療法がうつ病に効果があるかどうかは古くから検討されてきたものの、有効、無効の両方の報告があり、有効であることの決定的な証拠はなかったが、最新の研究成果によりその有効性が実証されるに至っている。

季節性うつ病の場合は双極性障害の可能性を念頭に置かねばならない。



●ハーブの利用

ハーブとして利用されているセント・ジョーンズ・ワートは、ドイツをはじめいくつかの国では軽度のうつに対して従来の抗うつ薬より広く処方されている。

日本ではサプリメントとして市販されている。

副作用があり、日本での治療エビデンスは希薄である。

臨床研究の結果は成否さまざまで、軽度から中程度のうつに対して有効でかつ従来の抗うつ薬よりも副作用が少ないとする研究がある一方で、プラセボ以上の効果は見られないとする研究もある。

コクランレビューによる2008年の報告によると、これまでのエビデンスからプラセボ群より優れた効果を示し、標準的な抗うつ薬と同等に効果があるが副作用は小さいことが示唆されるという。

ただし重度の抑うつには効果が弱いとされるほか、同時に服用した他の薬の効果に干渉することがあるため注意が必要とされる。

セント・ジョーンズ・ワートにおいてもセロトニン症候群の可能性があるので、注意が必要である。


posted by ホーライ at 03:33| 北京 | うつ病の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月22日

うつ病の治療(3)

■■■■■■ うつ病の治療(3)  ■■■■■■

うつ病を治す方法、鬱病を治す方法


●うつ病のその他の薬物療法

抗うつ薬の治療反応に乏しい場合、別の種類の抗うつ薬への変薬や追加(併用)のほか、炭酸リチウム、甲状腺ホルモン、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬の追加(増強療法)、(米国などでは)アンフェタミン、メチルフェニデートなどが試みられる。

米国や日本ではアリピプラゾールも既存治療で十分な効果が認められない場合に限って認可されている。

また電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)の適用を検討することもある。


非定型うつ病に対しては、抗うつ薬(SSRIなど)の他、気分安定薬や抗精神病薬が使用される。

不安障害を併発している場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多い。

抗不安薬・睡眠導入剤としてベンゾジアゼピン系がしばしば用いられるが、これらはベンゾジアゼピン依存症・ベンゾジアゼピン離脱症候群をまねき、うつ病を悪化させる。

各国政府はベンゾジアゼピンの処方を最大でも数週間に限るよう勧告しており、NICEではベンゾジアゼピン系の投与は患者と討議の上で短期間のみに限定され、慢性不安症への投与禁止、薬物依存を起こすため2週間以上の投与禁止と定められている。

うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)によると、薬物治療急性期には抗うつ効果発現までのベンゾジアゼピン系薬物処方は有用であるが、依存性のため長期投与は推奨していない。





●うつ病の薬物療法と自殺

抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺企図の危険が増加する危険性があるとアメリカ食品医薬品局 (FDA) から警告が発せられ、日本でもすべてのSSRIおよびSNRIの抗うつ薬の添付文書に自殺企図のリスク増加に関する注意書きが追加された。

FDAは、子供・青年・18-24歳の若年者に対しては、SSRI治療は自殺願望と自殺的行動について高いリスクが存在すると報告している成人についてはSSRIと自殺リスクの関係は明確ではない。

あるレビューでは関係性が認められておらず、別のレビューではリスクが増加すると報告され、第三のレビューでは25-65歳ではリスクはなく65歳以上では低リスクと報告している。



疾病データ上では、新しいSSRI時代の抗うつ剤の普及により伝統的に自殺リスクの高い国で自殺率の大幅な低下をもたらしていると分かったが、因果関係は確定されていない。


米国では2007年に、SSRIとその他の抗うつ薬について24歳以下の若年者では自殺リスクを増加させる可能性があるというブラックボックス警告がなされた。

同様の警告は日本の厚生労働省からもされている。


米国ではFDAの警告以降に若年者の自殺死者数が増加している。

FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題である。



APAガイドラインでは、抗うつ薬は自殺リスクを減らすエビデンスは小さい、しかしうつ症状の軽減に必要だとしている。


NICEガイドラインによると、2005年4月にヨーロッパ医薬品評価委員会はSSRIとSNRIについて、子供と青年には処方すべきではない(承認適応症を除くがこれは通常の抑うつは含まない)としている。

英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版[注 4]』(2009年)では、うつ病の治療が希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法であるとしている。




●うつ病の精神療法(心理療法)

貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、これらの社会的、状況的原因は薬によって変えることはできないが、薬で心理状況の改善はできる。

これらの社会的、状況的原因は変えることはできないが、これらの場合、心理療法の認知行動療法(CBT)や読書療法などが有効である。

また、心理療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い。



1998年、世界精神医学会(英語版)の「WPA/PTD うつ病性障害教育プログラム」は、高齢者への精神療法の適用について、「精神療法のみ」「精神療法と抗うつ薬の併用」の二つを挙げている。

また、「多様な治療法がある」「再発を予防するために、投薬は継続しなければならない。治療の成功は社会心理的支援がかかせない」としている。


2009年、プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は「心理療法のみの場合と、心理療法と抗うつ薬を併用する場合の効果の大きさは同じなのだから、なぜ、わざわざ抗うつ薬を持ち込む必要があるのだろうか」と述べている。

両方を併用すれば、抗うつ薬だけを服用するより効果があるが、心理療法を単独で行う以上の効果はない。

英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインは心理療法の重要性を認めており、6〜8回の認知行動療法(Cognitive behavioral therapy、CBT)または他の心理療法を推奨している。


具体的には、軽度〜中程度はカウンセリング、再発した場合はCBT、重度の場合はCBTと抗うつ薬との併用を勧めている。

英国政府は臨床試験で効果が証明された認知行動療法をはじめとする心理療法の拡充を開始し、薬物療法に代わる治療法として成果を上げている。



2012年、DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は「精神科の軽度、中程度の症状には、精神療法が少なくとも薬物療法と同じくらい効果があり、精神療法のほうが持続効果は長く、副作用は少ないのです。

非常に多くの人が必要のない薬物療法を受け、回復に大きく役立つであろう精神療法を受けていないというのは、理不尽であり、経済的動機がそうさせているのだと思います」と述べている。

重症の場合、心理療法単独では十分でない。

NIHは、高齢者の場合、再発防止のため薬物療法の併用が有効であるとしている。



●認知行動療法

外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。

抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。

対人関係療法も認知行動療法の要素を持つ。



考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていく。

認知行動療法は魔法ではない。

うつ病においても、薬物だけで治療した場合に比べ、認知行動療法を併用した方が、症状の改善と再発予防に効果的であると認められている。



現在認知行動療法(CBT)は、子供と青年の抑うつに対して最も研究エビデンスが多く存在する。

CBTと対人関係療法(IPT)は思春期の抑うつに対して勧められる。英国国立医療技術評価機構(NICE)では、18歳以下の人について薬物治療を行う場合はCBT・ICT・家庭セラピーなどといった心理療法を併用しなければならないとしている。



アメリカ精神医学会のガイドラインでは、認知行動療法等の心理療法は患者の初期治療の選択肢として推奨されている。

日本うつ病学会では、認知療法は薬物療法と同時並行的に行われる精神科治療の基本であり、薬物療法に代わる治療法という見方は明らかに間違っていると強調しているが、同時に、認知療法の優位性を示す研究データがあることも暗に認めている。

うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)では慢性化していない例では抗うつ薬より推奨している。



認知行動療法は、心理職が国家資格化されている国々では、精神科(精神科医、薬物療法中心)、心理療法科(サイコロジスト、心理療法中心)に分かれることがあり、薬物療法と同時並行的に行われるとは限らない。

認知行動療法は12回〜13回程度で終了するので、3ヶ月程度の短期治療では意味があるが、うつ病が3ヶ月を超えて長期化した場合は、薬物療法等の別の治療法を模索する必要がある。


うつ病患者の8割に伴う不眠症であるが、認知の歪みが原因では無いので、認知行動療法の効果は小さい。

不眠症に対しては、別途精神科から睡眠導入剤を処方してもらう必要がある。

ラベル:認知行動療法
posted by ホーライ at 05:47| 北京 | うつ病の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(8)『うつと不安の認知療法練習帳』大野 裕ら訳

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。鬱病患者の家族のための本。


人間の感情や感じ方というのは、そのとき直面している問題や状況を、その人がどう捉え、どう考えるかによって大きく変わってくる。

したがって考え方を変えることによって、抱えている問題を乗り越えることは可能なのだ。

本書は、いまアメリカの心理療法の分野で大きな勢力をもち、日本でも急速に広まりつつある認知療法を、うつや不安のなどの症状を抱える一般の読者が、自分で使えるように工夫された練習帳である。


うつ状態や不安である人は、現実を、ありのままの現実よりも悲観的に・破局的に捉えてしまい、苦しみます。認知療法では、その悲観的・破局的なものの捉えかたを修正して患者の気分を楽にすることが目的です(決してネガティブシンキングをポジティブに変えるわけではありません)。



本書では、悲観的な見方を裏付ける根拠と、逆に悲観的な見方を否定する根拠(=反証)を見つけて集める方法を紹介しています。

例えば、ヒゲが濃いことで悩んでいる高校生が、

・悲観的な思考:ヒゲが濃くて恥ずかしい。学校でも同級生の視線が気になってしまう。

・根拠      :実際にヒゲが濃い。男子からもそのことで冷やかされる

・反証      :一部の女子からは「男らしい、ワイルド」と言ってもらえた。



上記のように、(パッと脳裏に浮かぶ自動)思考、それを裏付ける根拠、自動思考を否定する反証を書き出します。

そして最後に、現実をありのままに見つめる「適応的思考」として、

“一部の男子からは冷やかされているが、男らしいと言ってくれる女子もいる”

という考え・ものの見方を自分で導き出すのです。

この本はよく出来ていると思います。



認知療法は、実際にノートに書き出すことが大切なのだと思います。

この練習帳は段階を追ってこれを実践できるようになっています。

思考・気分・行動・身体の関係を調べてみたり、気分を%で測ってみたり…目に見えないものを視覚化することによって、今までもやもやしていた自分象が見えるようになりました。


鬱は辛く苦しい病気だけれど、今では自分を真正面から見つめ直すという貴重な機会を与えられたのだと思っています。

この練習帳で身につけたことは今後の人生でもずっと役に立ってくれることと思います。



認知療法について、3人の主人公が持つそれぞれの悩みと回復の物語を通して、わかりやすく説明されている本です。

僕は自身の生活が本当に苦しい時に、この本やデビッド・D.バーンズ 氏の「いやな気分よ、さようなら」(こちらは、かなり分厚いです)などをよく読んでいました。


ただ、一口に認知療法と言っても、現在ではさまざまな方法や考え方に進歩してきているらしく、必ずしもこれらの本に出ているアプローチだけではないそうです。

いくつかの専門家の方のサイトでは「良い本ではあるものの決して万能ではなく、やはり専門家のアドバイスに従って、人それぞれの症状にあわせたステップを踏むべきだ」といったコメントが載せられていました。



実際のところ、個人的にはこれらの本にずいぶんと助けてもらい、出会えたからこそ何とか乗りこえてこれた…と本当に感謝しているのですが、僕の周囲の人で同じように「悩みを抱えている人」には薦めましたが、受け入れられてもらえなかったのも事実です。

この本のやり方がその人にあっているかどうかだけではなく、本を読む行為そのものが、そういう心理状態の場合簡単ではないことも多いのかもしれません。









posted by ホーライ at 05:32| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の治療(2)

うつ病を治す方法、鬱病を治す方法


●薬物療法

2012年の日本うつ病学会の大うつ病の治療ガイドラインによれば、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中程度以上の大うつ病では薬物療法は軽症に比べてより積極的に行う。

希死念慮の強い急性期、重症患者には薬物療法と精神療法、とりわけ薬物療法が重要である。

薬物療法では効果がない場合、mECTを検討する。



●抗うつ薬による治療

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミン作用といった副作用が比較的多い。

これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI、NaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる。



抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である。

なお、非定型うつ病については、欧米ではモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害剤)が第一選択として活用されているが、その激しい副作用と厳しい食事制限のため、2012年現在日本で認可されているものはない。



抗うつ薬の有効性および安全性については議論がある。

うつ病は、治療を行わなくても長期的には自然回復することが多く、数ヶ月以内の自然回復率が50%を越えるため、各種治療法の有効性の判断は難しい。

NIMHの専門家たちは、抗うつ薬が回復までの時間短縮に役立つ可能性はあっても、長期回復率の上昇には役立たないと考えている。

SSRIはプラセボ程度の効果しかないとの見解もある。



●日本うつ病学会のガイドラインによれば、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきである。

寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとしている。

英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いために軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)としている。



2013年、日本うつ病学会の野村総一郎事務局長によれば、軽症の場合、心理療法を優先とする。

うつ病の重症度が高くなると、薬物療法の有効性があらゆるデータから明確に示されている。

抗うつ薬を服用した重症度の高い患者のうち、効果が見られる患者の割合は70%程度である。

posted by ホーライ at 04:48| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病患者の家族のための本『家族・支援者のための うつ・自殺予防マニュアル』下園 壮太著

家族・支援者のための うつ・自殺予防マニュアル

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


愛する人を救うために今、あなたは何ができますか?

同じうつの人でも、どうして自殺する人と、そうでない人に分かれてしまうのか?

人の力で自殺を100%予防することはできません。

あなたにできることは、まず自分自身を落ち着かせることであり、死にたいと思っている人の気持ちを少しでも楽にさせ、自殺を思いとどまらせるために必要な方法や手順を知ることです。


とても大部な本で、最初は難しいのかなと思って手にしたが、中身はとてもよく作り込んであって、一つ一つ著者の人柄が伝わってくるような親切で、充実したものだった。


読者の大半は、かなり深刻な思いでこの本を手に取るだろうが、確実にこの本はあなたを救ってくれる本になるだろう。

また、ここまで懇切丁寧に解説された本も少ないと思われる。

しかも著者は、精神科医ではないため、薬の話に流されることなく、終始一貫して手だてを考えていこうとしている姿勢には、いかに今までの本が底の薄いものだったのかを改めて感じさせる。

値段も安く感じられる、そんな良書だ。


患者さんと家族に寄り添う姿勢が貫かれている。

医師の書いたうつ病に関する解説とは違って、患者さんの気持ちが少しは分かってあげられるような気がしました。

また、周囲の人に対して、覚悟を決めて距離を取るべきと時には距離をとりなさいというアドバイスも大変貴重だ。



風邪を引いた人は熱が下がるまで安静にし、骨折した人は骨が繋がるまで安静にする事は誰でも知っている事なのに、

風邪を引いた人を寒空の下にさらしたり、骨折した人を無理に歩かせたりしてはいけないのは誰でも知っている事なのに、



どうしてうつ病の人に対する周知の「当たり前」がないのだろう?

この本を読んで今まで疑問にもしなかった疑問が沸いてきます。



私は支援者側の人間ですが、先に同じ下園先生著の「うつからの脱出〜」を読んだ後、支援者としてこちらの本を読む必要性を感じ購読しました。


何事にも「万全」「最善」がないように、この本の方法も100%ではないかもしれません。

ですが支援者として知識と方法と自信を強く得た実感があります。

うつ病にはなにもかもを瞬時に治してくれる光線銃のような治療はないけれど、暗闇の中で道しるべとなるともしびがここにある。

そう感じさせてくれる一冊です。



鬱病患者を家族に持つ人は必見だと思います。

鬱病の学術的な解説ではなく、実際の患者との関わり方を中心に教えてくれます。

身近にいるゆえ、患者のことをよく知っているゆえ、不信が募っていく支援者。

患者が巻き起こす見た目の行動に、支援者が振り回されないよう、鬱病の症状や患者の心の状態が分かり易く書かれてます。

希望を失わない為にも是非とも読んでみて下さい。








ラベル:自殺予防
posted by ホーライ at 04:38| 北京 | うつ病患者の家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(6)『不安もパニックも、さようなら』野村 総一郎ら著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。

あの「いやな気分よ、さようなら」の著者、バーンズ博士がわかりやすく教える不安に負けない40の認知行動療法テクニックを紹介。(これがスグレモノ!)


日本に認知療法(認知行動療法)を広めたバーンズ博士の最新作。

ベストセラー「いやな気分よ、さようなら」と同様、読者自身が実践し、症状を軽減できる“セルフヘルプ”形式の本書は、薬を飲むことなく、効果的に不安障害を治療できる認知行動療法を紹介します。

パニック発作、対人恐怖(社交不安)、恐怖症、PTSD、強迫性障害などの不安・パニックの症状に打ち勝つ強力な40のテクニックを、読者はご自分の症状に合わせて効果的に選択することができます。

また、精神科医、臨床心理士などの専門家の方にとっても参考になる技法が満載です。


パニック障害は薬物療法が中心となりますが、最終的には薬なしに症状が出ないことが目標だと思います。

パニック障害の原因は脳内物質の異常分泌など様々な説がありますが、思考・習慣にも原因があるのであれば、それらを解決する必要があります。

本書は翻訳書ですが、日本人にとっても読みやすい内容になっています。


既存作の「いやな気分よさようなら」「FeelingGOODハンドブック」「自尊感情を取り戻す為の10日間プログラム」を読んできたが、今回の本が一番とっつきがいい。

数多くの技法を紹介しているし、実例エピソードも豊富で、説得力がある。

また、その技法が効かない可能性もあり、その場合は別の技法を試す。ということを明言しているのもいい。

鬱に悩んできた私にとっては10倍の価格でも惜しくないほどの名著です。









ラベル:野村総一郎
posted by ホーライ at 04:26| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の治療(1)

うつ病を治す方法、鬱病を治す方法

■■■■■■ うつ病の治療(1)  ■■■■■■

●うつ病の治療

1950年代に抗うつ薬が登場するまでは、電気けいれん療法(1938年創始)、ロボトミー(1935年創始)しか効果の証明された治療法が無かったが、その後抗うつ薬が登場し薬物治療が発達した。

現在、うつ病治療としては(1)休養 (2)薬物療法 (3)精神療法 (4)環境調整 (5)特殊療法(ECTなど)などが組み合わせて行われる。

中でも薬物療法と休養が原則とされる。



基本的に現在はまずうつが病気であることを本人・家族が納得し、「無理をせず、養生して、(原則として)薬を飲んで、回復を待つ」ことである。

自殺の危険性が高い症例では、入院治療が必要となる。

特に、「死にたい」とか「消えてしまいたい」「自分は居ない方がいい」などの希死念慮や自己否定的な内容を口にする場合には、自殺の危険性があり、すみやかな受診が必要である。



●休養

休養がうつ病の特に病初期(急性期)には重要であり、日常生活に著しい障害が生じている場合には、仕事を休んだり、主婦であれば家事を誰かに手伝ってもらうなど、社会的役割を免除してもらい、休養する必要がある。

そのため、自殺の危険は少ない場合でも、入院の適応となる場合がある。

日常生活における障害が軽い軽症例では、これまで通りの生活を続けながら、薬物治療などを行うこともある。

休養、薬物療法、精神療法は治療の3本柱であり、身体疾患と基本的に同じである。



●心理教育(うつ病の対応の原則)

病初期(急性期)の心理教育の原則として「笠原の小精神療法」が有名である。

1)うつ病は病気であり、単に怠けではないことを認識してもらう

2)できる限り休養をとることが必要

3)抗うつ薬を十分量、十分な期間投与し、欠かさず服用するよう指導する

4)治療にはおよそ 3 ヶ月かかることを告げる

5)一進一退があることを納得してもらう

6)自殺しないように誓約してもらう

7)治療が終了するまで重大な決定は延期する



内因性うつ病の症状は、“気の持ちよう” “努力”などで変えられるものではない。

変えられないものを、変えようと無理をすれば、症状を悪化させる。

むしろ、変えようとせず、憂うつな気分に逆らわず、十分な休養を取りながら、回復を待つべきである。

うつ病の症状の一つに、将来を悲観してしまうことがある。

病気のため、もう治らないとしか考えられなくなることも多い。

しかし、うつ病はいかに重症でもいつかは改善するものである。

いつかは良くなるという希望を持つことが重要である。



またあせって人生の決断を下さない方がよい。

例えば転職・退職、離婚などの重要な決断はなるべく後回しにする。

一般にうつ病のため判断能力は低下していることが多く、適切な判断が下せないことが多い。

治療の前提として、治療の基本的原則について、しっかりと医師が説明を行い、患者が納得して治療に取り組むことが必要である。

また、投薬についても、医師がしっかりと説明する必要がある。

患者も、分からないことは質問していくことが必要である。

こうした医師と患者のコミュニケーションが治療の成功には不可欠である。

また、うつ病の一人一人の患者においては、信頼できる主治医をもち、自分に合ったアドバイスを主治医にもらうことが最も重要である。




●家族の対応

家族など周囲の人たちも、長い目でうつ病患者を見守ることが求められる。

「頑張れ」や「さぼるな」という言葉は、患者自身の力ではどうしようもない今の状態を、今すぐに自分の力で変えるようにと、無理を求めるものとなる。

そして、このような言葉は、患者を追いつめ、最悪の場合、自殺の誘因とならないとも限らない。

患者のみならず、周囲の人々も、患者がうつ病であり、患者自身の力では今の状態から抜け出せないことを受け入れ、長い目で回復を信じ、あせらないことが必要である。

「気の持ちようではないか」「旅行にでも行って気分転換してはどうか」といった言葉も、適切ではない。

うつ病でなくとも、嫌なことが起きれば、嫌な気分になるし、そういった一過性の軽い抑うつ気分は多くの人が経験する。

これらの言葉は、うつ病もそれと同じように対処すれば良いものと見ている。

しかし、長期間に及ぶような酷いうつ状態(つまりうつ病)の場合には、適切な治療なしには気の持ちようを正すこともできず、旅行に行く気力も出ないため、これらの言葉はかえって患者を苦しめる。

患者がこれらのアドバイスを受け入れられるほど回復したかどうかの見極めが大切である。




●環境調整

とくに心因が強く影響していると考えられるうつ病の場合、環境のストレスが大きい場合は調整可能かどうかを検討し、対応する。

心理的葛藤に起因すると思われるうつ病では、原因となった葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなどの原因に対する対応が必要である。

またうつ病の回復期・リハビリ期においては、段階的復職などの配慮が必要である。

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、リワーク支援を実施している。

ストレスへの対処法(認知行動療法の一部)、リハビリ出勤、会社との調整など実施している。

posted by ホーライ at 04:19| 北京 | うつ病の治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月21日

うつ病の診断

■■■■■ うつ病の診断 ■■■■■

●DSM-IV-TRとICD-10の診断基準

抑うつについて最も広く用いられる診断基準は、アメリカ精神医学会による精神障害の診断と統計の手引き改訂4版(DSM-IV-TR)と、世界保健機関の疾病及び関連保健問題の国際統計分類(ICD-10)である。

前者は米国および非ヨーロッパ諸国で多く用いられ、後者はヨーロッパで多く用いられる。

双方の製作はお互いに反映し合いながら行われている。



ICD-10では「大うつ病」という用語を使用していないが、(軽度・中等度・重度)うつ病エピソードの診断のために、DSM-IVの大うつ病に非常に類似した症状のリストが使用される。

複数のうつ病エピソードが存在し、躁病のないものにはrecurrent depressive disorder(再発性うつ病性障害)という名称が用いられる。


双方のガイドラインでは典型的な抑うつ徴症を示している。


ICD-10では3つの抑うつ徴症(depressed mood, anhedonia, and reduced energy)を示し、そのうち2つはうつ病の診断確定に必須である。

DSM-IV-TRでは2つの主な抑うつ徴症(depressed mood, anhedonia)を示し、少なくともひとつが大うつ病の診断確定に必須である。

DSM-IV-TRでは大うつ病は気分障害に分類される。

診断は単発または繰り返される大うつ病エピソードに基づく。

追加の情報はその他の障害と区別するために用いられている。

特定不能うつ病性障害(en:Depressive Disorder Not Otherwise Specified)は、抑うつエピソードが大うつ病エピソードを満たしていない場合に診断される。




●大うつ病エピソード(DSM-IV-TR)

大うつ病エピソードとは、少なくとも2週間以上の深刻な抑うつ気分の愁訴によって特徴付けられる。

もし患者が躁病や軽躁病のエピソードを持っていれば、診断は代わりに双極性障害となる。

DSM-IV-TRでは症状が死別によるものである場合は除外しているが、しかしその気分が長期化し大うつ病エピソードの特徴付けられる要素がある場合は、死別を原因として抑うつエピソードに入る可能性があるとしている。

DSM-5では死別もうつ病の原因になった。



●臨床評価

大うつ病の診断を行う前に、一般的に医師によって医学的検査と幾つかの調査が他の症状を除外するために行われる。

血液の甲状腺刺激ホルモン(TSH)とチロキシン測定によっての甲状腺機能低下症除外、基礎電解質と血中カルシウム測定で代謝障害の除外、全血球算定(赤血球沈降速度ESRを含む)により全身性疾患や慢性疾患の除外など。

薬物の副作用やアルコール乱用も同様に除外される。

男性の抑うつの場合、テストステロンのレベル測定によって性腺機能低下症も除外される。

客観的認知についての問題が老人の抑うつに現れることがあるが、それはアルツハイマー病などの痴呆性疾患の可能性がある。

認知テストと脳画像イメージによって認知症とうつ病を区別する助けとなる。

CTスキャンは精神病患者の脳病理を除外することができ、また異常兆候を迅速に判断できる。

生物的テストでは大うつ病の診断を行う方法はない。

一般的に、医学的な問題がない限りその後検査を繰り返す必要はない。

パーソナリティ障害や不安障害、不眠症の合併の有無を確認する。



●鑑別疾患

本当のうつ病に該当するもの以外にも、うつ状態を呈するものとして、次のような原因によって引き起こされる。

・一過性の心理的なストレスに起因するもの(心因性のうつ、適応障害、急性ストレス障害、心的外傷後ストレス障害 (PTSD) など)

・双極性障害、統合失調症、自律神経失調症、パニック障害など、他の疾患の症状としてのもの

・物質(例:乱用薬物、投薬)の直接的な生理学的作用、明らかに身体疾患によるもの

また、器質的疾患からうつ状態となることもある(器質性気分障害)。




●双極性障害との鑑別

うつ病の診断においては、軽躁と鬱を繰り返す双極II型障害を単極性・反復性と誤診するなど、双極性障害と見分けがつきにくいケースが多い。

患者側も、睡眠時間が短くてもすんでしまうなど現代の過酷な社会環境にむしろ適応的であり、ばりばりと働けたなどの充実感などのため、軽躁状態を異常と認識せず、主治医に申告しないこともある。

そのため、大うつ病性障害など「うつ病として」受診に来た患者を診断する場合、初診で躁病エピソードの既往症(軽躁エピソードは特に)を確認し、双極性障害でないかどうか明確に鑑別しておくことが何よりも重要であるとの指摘がある。

これは、大うつ病性障害などの単極性の気分障害と双極性障害は、治療法が根本的に異なるためである。



また、長期経過の中で、うつ状態に加えて躁状態も生じる場合にも、双極性障害(いわゆる躁うつ病)の可能性がある。

そのため、躁状態に転じることを常に注意し、素早く対応することが必要であるとも指摘されている。

若年者は、双極性障害のうつ病相や統合失調症の好発年齢であり、安易に「非定型うつ病」と決めつけることは“誤診”につながる。



うつ病を繰り返し生じる場合には、反復性うつ病と呼ばれており、これも、遺伝研究などによって、躁うつ病と根本的には同一の疾患であるとされている。

一方、再発のないうつ病は、単一エピソードうつ病と呼ばれ、躁うつ病とは異なった疾患であると考えられている。




近年、最先端医療の分野で光トポグラフィーを用いた科学的な診断方法が注目を浴びているが、ごく一部の医療機関でしか行われていない。

うつ病、統合失調症、双極性障害の判断区別を行う事も可能とされる。

先進医療であり保険は未承認。

データの蓄積が少なく、研究途上という性格が強く、現在では検査入院などの専門家による精査とセットでないと実際の診断には難しいというのが実情である。

2012年現在の日本では、「鑑別診断補助」の位置づけである。検査結果は、診断や治療の参考になるよう紹介精神科医へフィードバックされる。



●器質性気分障害

下記のような器質的疾患からうつ状態となることがあり、診察時には注意を要する。

・中枢神経系(脳血管障害、パーキンソン病、脳腫瘍 など)

・内分泌系(副腎疾患(アジソン病など)、甲状腺疾患 (橋本病など)、副甲状腺疾患 など)

・炎症性疾患(関節リウマチ、全身性エリテマトーデス など)

・歯科治療用重金属中毒



posted by ホーライ at 07:30| 北京 | うつ病の診断 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の症状

■■■■■ うつ病の症状 ■■■■■


あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような症状を呈するものまである。

DSM-IVにおける大うつ病性障害の診断基準では、「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」2つの主要症状が基本となる。

また、精神症状と共に身体的な症状を生じる。身体的な症状は、診断に先立って訴えられることもある。


●精神症状

ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。

学校・会社・部活動では、休みがちになったり、不登校になる。

集中力、気力、意欲がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなる。

人の話を聞けなくなる。「どうせ自分なんか価値の無い存在だ」と考えるようになるなど、自尊心が低下する。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。

「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。

この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされている。

これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「罪悪感」、「自殺念慮・希死念慮」などがあり、その結果として自殺に至る例もある。



●身体的症状

頭が割れるような頭痛。

不眠症などの睡眠障害。

吐き気。少しの動作で疲れるようになってしまう。

消化器系の疾患で急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍。摂

食障害に伴い、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加。


全身の様々な部位の痛み(腰痛、頭痛など)訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものである。

睡眠状態と食欲状態はうつ病の問診項目である。

うつ病の約8割に不眠が、1割に過眠が見られる。

不眠症によりうつ病は2.1倍になる。



●その他人

付き合いを避けるようになるなど、対人関係が悪化し、さらに病気を悪化させるという悪循環が起きやすい。

不眠症の放置により、生活リズムが乱れやすい。

疾患にともなう作業能力の低下、失職、学業不振、退学等、生活適応面に及ぼす影響も甚大である。

posted by ホーライ at 07:24| 北京 | うつ病の症状 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(5)『いやな気分よ、さようなら』野村 総一郎ら著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


『いやな気分よ、さようなら』は、発売以来、英語版で300万部以上売れ、「うつ病」のバイブルと言われている。

抑うつを改善し、気分をコントロールするための認知療法を紹介する。

最近の大規模な調査によると、『いやな気分よ、さようなら』を読んだうつ病の患者さんの70%が、他の治療を併用することなく4週間以内に改善し、3年後でもその良い状態を維持していた。

この効果は、薬物療法や他の精神療法と比べても、優れているものと言えよう。

抑うつや不安な気分を克服するための最も効果的な科学的方法を、本書を読むことにより、学んでください。

増補改訂に際し、最近の新しい薬の話や脳内のメカニズムについて、分かりやすく詳しい説明が追加されている。



認知療法の枠を越えた画期的な本。

どうすれば鬱や無気力が治るのか、恋人や夫からの愛情がなくなった時にどうすればいいのか、愛する人がなくなった絶望感から早く抜け出す方法、批判してくる相手に対する最適な話し合いテクニックetc...(もっと載ってます)

人生の様々な問題に対する対処方法が書いてある。

鬱度チェックもついているので自分の鬱度を随時チェックできる。

めちゃくちゃ重い鬱病の人は本を読むことすら出来ないとは思うけど、本を読める力のある人は一日一章ずつ、継続して読むことを勧めます。


一度読むだけだとまた忘れるので、騙されたと思ってとにかく続けて下さい。

認知療法用のノートも併せて作ると最適です(トリプルカラム法:本書参照)

もっともっと多くの人に鬱から立ち直って欲しい。



これまで何十冊も「元気が出る」系の本を読みましたが、ほとんどが根拠のない精神諭の押し付けに過ぎませんでした。

しかしこの本は学術的バックグラウンドを元に、論理的、実践的かつ包括的で、非常に内容が濃く、巷の自己啓発本とは一線を画しています。

私はこれですっかり元気になりました。


原書が米国で出版されたのは20年以上も前ですが、当時200万部のベストセラーになっただけあって、内容も古さを感じさせません。

買ってきた日から取り組めて、気分改善だけでなく周囲の問題解決にも役立つ優れもの。

うつの予防法、心の成長を語る部分は本書のクライマックスですが、歯切れよく鋭い示唆に満ちており圧巻です。

サブタイトルに抑うつ克服法と書いてありますが、もっと幅広く人生における悩み全般に適用できる、他に類を見ない良書だと思います。

一般書コーナーに置いてほしいくらいです。



原書はもう四半世紀売れ続けてる認知療法の大ベストセラーです。

また自分で本を読んでやるビブリオセラピー(読書療法)の研究でも、いちばんよく使われる本でもあります。
 
認知療法を中心に、実にさまざまな技法やTips(小ネタ)、エピソードが満載で、多くの人が思い思いのやり方で、いろんな箇所を参考にしているようです。


とりあえずは第3章と第4章だけ読めば、認知療法は始められます。

そして困ったことや行き詰まったことがあるたびに、ページを開けば、どこかに切り抜けるためのヒントややり過ごすための方法が出てきます。

読み追えた後にも、繰り返し参考になる本です。 (認知療法の辞書のように使える。)








ラベル:野村総一郎
posted by ホーライ at 06:34| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(4)『ツレがうつになりまして』細川貂々著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


スーパーサラリーマンだったツレがある日、突然「死にたい」とつぶやいた。

会社の激務とストレスでうつ病になってしまったのだ。

明るくがんばりやだったツレが、後ろ向きのがんばれない人間になった。

もう元気だったツレは戻ってこないの?

病気と闘う夫を愛とユーモアで支える日々を描き、大ベストセラーとなった感動の純愛コミックエッセイ。



うつ病歴 結構経ちます。

今、減薬中で、かなり良いトコまで来ています。

私が通院している病院に置いてあり、待合室で読みました。

とっても読みやすいので、1日もあれば読めてしまう内容です。

そうして、「これも!」「あ!これも!」って、私が経験したこと全てが書いてありました。



『普通の人には 息を吸う程簡単なこと』が、私にはできなかった。

『渦中の人』が読むには、もしかしたら辛いかも知れません。(ずいぶん調子良くなった今でも、読んでドキドキしましたから...

ただ、「なぁんだ!自分だけじゃないんだ!」ってことが解って、自分を責めたり、現状に焦ったりしなくなる効果は あると思います。)


でも、周囲の人には読んで貰うべきです!


『うつ』でない人には 絶対理解して貰えない症状 (自分で理由が説明できない 自分の行動の全て)を読んで貰うだけで、「今の私は、ツレさんと同じなの」と 私に代わって説明してくれる。

もっと早く この本に出会っていたら、周囲の不理解に苦しまなくても良かったかも。



今、辛い人へ

周囲の理解を得る為に、この本はお勧めです!

また、今できないことの全てが『うつ』の症状である ということが解ります。

どうか自分を責めないであげて下さいね。



『うつ』の人を身近でサポートしている人へ

『うつ』を経験した人じゃないと理解できない色々な出来事が書いてあります。

理解できても できなくても、この書いてあるそのものが 『うつ』の人の『普通』なのです。







posted by ホーライ at 06:25| 北京 | うつ病患者の家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本(3)『うつ病をなおす』野村総一郎著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


分かってきたことは、うつ病の本質は絶望にあるのではないことである。

絶望は病気ゆえに感じる「症状」であって、症状である以上、医学的な治療が解決の切り札になる。

そしてまた、うつ病の治療態勢はここ10年で見違えるほど整備されてきているのだ。

もっとも信頼される名医が説く、なぜ「うつ」になるのか、どうすれば回復するか。



現役専門医による鬱病の解説書。

私はもう何年も前に患って、最近は病気だったときの記憶をあまり思い出せないのですが、本書は当時を思い出しながら、それでいてとっても楽しく読めました。

本書が楽しいのは、現役医師のホンネがそこかしこに漏れ出ているからです。

こういう広く一般に読まれる本を書く専門家は、あまりホンネを出さないものですが、この人は違います。


特定の薬に対して「私もこの二つの薬は好きである」なんて、思いっきり個人的なコメントをしている。

私の乏しい経験では、良い医師は個人的な感情を押し殺さない。

万能の医師ではなく欠点ある一人の人間として患者に対峙してくれる。

彼の個性をフックにして、患者である私は医師に人間的信頼を抱き、自分への信頼を回復していきました。



本書は最新の治療について非常にきちんと書かれています。

まず薬物療法についてしっかりと書かれてますから、患者は「自分が今どんな治療を受けているか」を理解する助けになるでしょう。

その次に通電療法。そして認知療法。

良いのは、精神分析など日本ではほとんど実施されていない・効果も薄い・高価で時間がかかる治療法についてはムダにページを割いていないこと。

精神療法は現在の日本では現実的な選択肢ではありませんが、いたずらに投薬を「薬漬け」と批判する人たちが、さも投薬より効果があるみたいな幻想を振りまいています。

本書はそうした幻想に与しません。

あくまでも現場レベルでの最善を紹介しています。


私は本書の姿勢に強く共感し、支持します。



先に同じ講談社現代新書の笠原嘉『軽症うつ病』を読み、その文章の読みやすさ、内容の分かりやすさに感動したが、同じ新書で本書が出た事を知り、笠原版の続編を読むようなつもりでさっそく読み始めると、これもまた驚くほどの読みやすさ。

かといって内容が薄いわけではない。

勿論、初めて読む人のために前半の症例紹介などでは笠原版と重なる記述もあるが、著者が異なるとやはり視点が少し異なり、またズンズン読んでしまえる。

本書の最大の特色はタイトルが示す通り、治療法に比較的重点を置いて書かれていることだ。

特に4章「うつ病の治療メニュー」に含まれる「主な抗うつ薬」(pp.126~132)や「気分安定薬の解説」(pp.137~140)は代表的な薬の名称と共に特徴や副作用も述べられていて、現在通院服薬中の患者さんにとっては非常に参考になるだろう。

又、個人的にはpp.145~149に解説されている「通電療法(=電気ショック療法)」なるものに興味がわいて思わず自分も受けてみたくなった。

筆者の野村氏も、同僚に「自分がもしうつ病になったら、真っ先に通電療法を受けさせてくれ」と頼んでいるらしい。


ちなみに筆者の「野村総一郎」さんは、私の長女の同級生のお父さんでもある。







ラベル:野村総一郎
posted by ホーライ at 06:17| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。(2)『軽症うつ病』笠原嘉著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


生真面目で心やさしい人々をおそうゆううつ、不安。

おっくう感。軽症化しつつふえている理由なき現代的うつ状態への対処法と立ち直りの道筋を明快に説く。

第3の「ゆううつ」――脳に原因があっておこる「ゆううつ」と、心理的な悩みにひきつづきおこる「ゆううつ」……実はもうひとつ、第3の「ゆううつ」があって、話をいささか複雑にするのです。

私たちはこの第3を「内因性のゆううつ」と呼んでいます。

内因性とは文字どおり「内側からひとりでに」「目覚まし時計が一定の時刻になると鳴るように」おこるという意味です。

脳に大きな障害はない。

原因となりそうな身体病もない。

たとえば、うつ気分をひきおこすことの知られている内分泌疾患もない。

逆にまた、そういうことがあれば誰だってゆううつになるであろうような、はっきりした心因的環境的な出来事も先行していない。

ひとりでにおこってくるというしかない。

そういう場合です。――


この本は、うつ病の患者さん本人向けのものだと思います。

本のタイトルにある通り、主に「軽症」の方を想定しています。

さらに、患者さんの年齢層としては、うつ病の好発期である中高年の方々を対象としているようです。

しかし、これらにあてはまらない方にとっては役に立たないということではありません。


私は、今現在うつ病で苦しんでいらっしゃる方で、何とか平易な文章ならば読むことができそうだ、という方全員におすすめします。

この本をどこかご自分のすぐ手の届くところに置いておいておくことで、現実にかかっていらっしゃる先生にすぐお会いになれないときでも、すぐに専門家のアドバイスを得ることのできるような、安心感を得ることができると思います。

患者さん本位の、優しい口調で書かれています。

よくうつ病の概説書にありがちな、患者さんを説教するような部分はまったくといってもいいほど、見当たりません。

患者さんにとっては、安心して読める本だと思います。

病気を見つめてみるという意味でも、ぜひ一度手にお取りになってみてはいかがでしょうか。

なお、他の方々も指摘されているように、この本はうつ病について客観的な知識を求めている方には、内容的にやや物足りない感じがするかもしれません。

そのような方には、野村総一郎先生の『うつ病をなおす』の方をおすすめします。

こちらの方がより広範囲のうつ病を対象としており、かつ詳細な記述がなされています。







posted by ホーライ at 06:04| 北京 | ライフワークを考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の疫学・統計

■■■■■ うつ病の疫学・統計 ■■■■■ 


厚生労働省によれば、うつ病の12カ月有病率(過去12カ月に経験した者の割合)は世界では1〜8%、日本では12カ月有病率が1〜〜%である。

また、生涯のうちにうつ病にかかる可能性については、川上によれば3〜16%である。

日本では、水野らによれば12ヶ月有病率は3.1パーセント、川上によれば生涯有病率6.7パーセントとされている。

これらの研究結果から、ある時点ではだいたい50人から35人に1人、生涯の間には15人から7人に1人がうつ病にかかると考えられている。


●性差

男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている。

閉経や子どもの自立による喪失体験、PMSによるストレス、男性より寿命が長いことによる配偶者との死別などによる部分も少なくはないと思われ、社会生活によるストレスが多い男性にも普通に見られる。

女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。

産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。

日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。



●患者数とその推移

日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが原因としてあげられる。

日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。

うつ病の患者数が20世紀になって増加していることについて、SSRIの導入後6年間で2倍に増えるという経験則があり、製薬会社のキャンペーンが影響している、とした説もある。

「副作用の少ない」抗うつ薬の普及に伴い、うつ病と診断される患者数が増加している側面がある。



●子どものうつ病

子どもでもうつになる場合があり、子どもの大うつ病の時点有病率は児童期で0.1から2.6パーセント、青年期で0.7から4.7パーセントとされている。

いじめ等の自殺行為は、重度に発展したうつ病による可能性もある。

うつ気分が、イライラする、怒りっぽくなる、落ち着きがなくなるなどの形で表現されることも多い。



●自殺企図者とうつ病の統計

重大な自殺を図った者の75%に精神疾患があり、その46%はうつ病である。



●喫煙との関連

製薬会社のファイザーが2009年6月に10年以上の喫煙歴がある40 - 90歳の男女計600人を対象にインターネットで行った調査によると、ニコチン依存症の人の16.8パーセントにはうつ病やうつ状態の疑いがあり、ニコチン依存症でない人でのその割合は6.3パーセントのため、ニコチン依存症の人ほど、うつ病・うつ状態の可能性が高いと報告している。

また、典型的な抗うつ薬であるイミプラミンについて、喫煙者は効果が半減するとの指摘がなされている。

ただし、喫煙者であって重症のうつ病の間の禁煙は医師との相談が必要である。

ニコチン離脱時にうつ病が再燃しやすい。


posted by ホーライ at 05:54| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。(1)『森田療法』岩井寛著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。


僕は、本当にこの本に救われた。

大袈裟ではなく、文字通り、『命を救われた』。


他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。

こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。


新書本にありがちな平板な概説書かと思い大して期待せずに読み始めたが、さにあらず、筆者の魂のこもった壮絶な書だった。

筆者は、末期癌の病床で視力をも含む体の機能の過半を失いながら、自己の生きる意味を追求するため、口述筆記によって本書を執筆した。

たとえ不安や恐怖に押しつぶされそうになっても、たとえ絶対絶命の状況に置かれても、それを「あるがまま」に受け入れ、自己実現のために一歩でも踏み出していく、そうした森田療法の精神を本書の執筆それ自体により筆者は具現化して見せたのである。

本書の中で紹介される幾多のエピソードは、筆者の人生の記録そのものである。

数度の流産経験を経てやっと授かった我が子が、生後間もなくして死亡する。

その際、悲しみに満ち溢れつつ、筆者は赤ん坊の死顔を夢中でスケッチブックに描きとめた。

傍目には異常とも思えるこの筆者の行動もまた、筆者流に解釈した森田療法の実践であった。

これほど読み手の心を揺さぶる新書本を私は他に知らない。

魂の書である。




世界的に知られている森田療法は、神経症に伴う不安、恐れを、「あるがまま」に受け入れる事を説く。

しかし、表面的に受け取ってしまっては、真の「あるがまま」の意味は伝わりにくく、誤解の恐れもある。

筆者は、自身の体験や治療した患者の例を通じて、判りやすく、具体的に森田療法について解き明かしており、森田療法への格好の入門書となろう。


「あるがまま」を受け止めるという古くから有る精神科領域の「森田療法」の紹介である。
 
この「あるがまま」を受け止める、というのは言うは易く、行うは難しだ。

そこを、臨床経験豊富な精神科医が具体的に解きほぐして解説してくれる。

うつ病などには、今ではかなり良い薬が出ているが、この本により僕も何度か命を救われた。

ストレスの多い、現代人にとっては、日頃から「あるがまま」を「積極的に、肯定的に受け入れる方法」を実践することが、自分を守ることになる。
 
そんな方法を筆者が自らは死の床にいながらにして、生き残っている僕らに残してくれた現代人必読の一冊である。







ラベル:森田療法
posted by ホーライ at 05:45| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の原因(2)

■■■■■ うつ病の原因(2) ■■■■■

●脳の海馬領域における神経損傷仮説

うつ病の神経損傷仮説:

近年MRIなどの画像診断の進歩に伴い、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている。

そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている。


心的外傷体験が海馬神経損傷の原因となるという仮説:

また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。

コルチゾール(cortisol) は副腎皮質ホルモンであり、ストレスによっても発散される。

分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。

また、このコルチゾールは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の脳のMRIなどを例として観察されている。

心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認される。




【心理学的仮説】

●病前性格論

心理学的仮説としては、フーベルトゥス・テレンバッハの唱えたメランコリー親和型性格が有名である。

これは、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説である。

しかし、このような生活上の悩みがうつの原因になるとしても、すべての症例がこの仮説によって説明できるわけではない。

例えば、家族の一員の死により深刻なうつ症状に陥る人もいれば、短期間で乗り越える人もいる。

一方で、特段の理由もなく深刻なうつを発症するケースもある。



うつ病患者にメランコリー親和型性格者が有意に多いという統計学的エビデンスは数多く報告されているが、それらの値は現代に近づくにつれて減少傾向を示しており、現在ではうつ病患者に特徴的な性格傾向はほとんど見られなくなっている。


うつ病にかかりやすい病前性格として、日本では主にメランコリー親和型性格、執着性格、循環性格などが提唱されてきた。

しかし、近年ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、これらの性格に該当しないディスチミア親和型と呼ばれる一群の患者が増加しているとされる。

ディスチミア親和型はパーソナリティ障害ないし、パーソナリティ障害傾向を持つ人々が多く、自己愛的・回避的な問題を抱えるケースが報告されている。


なお、現代ではDSMの普及によって大うつ病性障害にはあらゆる抑うつ症状が混合してしまっており、病前性格の評価そのものが困難になってきている。

成因を問わない操作診断によって生じた混乱に対し、ハゴップ・アキスカルやジャーマン・ベリオスをはじめとした英米圏の学者達は連名でうつ病概念を整理する必要性を説いており、大うつ病性障害からメランコリアを切り離すことについて提言を行っている。





【その他うつ病の発症・経過に影響する因子】

●薬物・アルコールとの関連

DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしている。

大うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは"substance-induced mood disturbance"と定義される。


アルコール依存症または過度のアルコール消費は、大幅に大うつ病の発症リスクを増加させる。

また、逆にうつ病が原因となってアルコール依存症になる場合もある。



ベンゾジアゼピンは不安障害や不眠症の人が服用する薬である。

アルコールと同様に、ベンゾジアゼピンはうつ病発症リスクを増加させる。

この種類の薬は不眠・不安・筋肉痙攣に広く使用されている。

このリスク増加はセロトニンとノルエピネフリンの減少など、薬物の神経化学への効果が一因である可能性がある。

ベンゾジアゼピン系の慢性使用も抑うつを悪化させ、うつ症状は長期離脱症候群の1つである可能性がある。


厚生労働科学研究によれば、実際には睡眠導入剤、抗不安薬としてベンゾジアゼピン系などが多く処方されているが、長期の安全性については疑問符があるため、適正使用ガイドライン等が検討課題であると述べられている。



●社会的要因

貧困と社会的孤立は、一般的に精神衛生上の問題のリスク増加と関連している。

児童虐待(物理的、感情的、性的、またはネグレクト)も、後年になってうつ病を発症するリスクの増加に関連付けられている。

成人では、ストレスの多い生活上の出来事が強く大うつ病エピソードの発症に関連付けられている。

生活上のストレスがうつ病につながる可能性が増加したり、社会的支援の欠如がうつ病につながる可能性がある。

後述する認知行動療法は、考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていくものである。

ライフイベントの影響(閉経、財政難、仕事の問題、人間関係のトラブル、近親者との死別による分離等



posted by ホーライ at 05:35| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする