生真面目で心やさしい人々をおそうゆううつ、不安。
おっくう感。軽症化しつつふえている理由なき現代的うつ状態への対処法と立ち直りの道筋を明快に説く。
第3の「ゆううつ」――脳に原因があっておこる「ゆううつ」と、心理的な悩みにひきつづきおこる「ゆううつ」……実はもうひとつ、第3の「ゆううつ」があって、話をいささか複雑にするのです。
私たちはこの第3を「内因性のゆううつ」と呼んでいます。
内因性とは文字どおり「内側からひとりでに」「目覚まし時計が一定の時刻になると鳴るように」おこるという意味です。
脳に大きな障害はない。
原因となりそうな身体病もない。
たとえば、うつ気分をひきおこすことの知られている内分泌疾患もない。
逆にまた、そういうことがあれば誰だってゆううつになるであろうような、はっきりした心因的環境的な出来事も先行していない。
ひとりでにおこってくるというしかない。
そういう場合です。――
この本は、うつ病の患者さん本人向けのものだと思います。
本のタイトルにある通り、主に「軽症」の方を想定しています。
さらに、患者さんの年齢層としては、うつ病の好発期である中高年の方々を対象としているようです。
しかし、これらにあてはまらない方にとっては役に立たないということではありません。
私は、今現在うつ病で苦しんでいらっしゃる方で、何とか平易な文章ならば読むことができそうだ、という方全員におすすめします。
この本をどこかご自分のすぐ手の届くところに置いておいておくことで、現実にかかっていらっしゃる先生にすぐお会いになれないときでも、すぐに専門家のアドバイスを得ることのできるような、安心感を得ることができると思います。
患者さん本位の、優しい口調で書かれています。
よくうつ病の概説書にありがちな、患者さんを説教するような部分はまったくといってもいいほど、見当たりません。
患者さんにとっては、安心して読める本だと思います。
病気を見つめてみるという意味でも、ぜひ一度手にお取りになってみてはいかがでしょうか。
なお、他の方々も指摘されているように、この本はうつ病について客観的な知識を求めている方には、内容的にやや物足りない感じがするかもしれません。
そのような方には、野村総一郎先生の『うつ病をなおす』の方をおすすめします。
こちらの方がより広範囲のうつ病を対象としており、かつ詳細な記述がなされています。
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