●薬物療法
2012年の日本うつ病学会の大うつ病の治療ガイドラインによれば、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中程度以上の大うつ病では薬物療法は軽症に比べてより積極的に行う。
希死念慮の強い急性期、重症患者には薬物療法と精神療法、とりわけ薬物療法が重要である。
薬物療法では効果がない場合、mECTを検討する。
●抗うつ薬による治療
抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミン作用といった副作用が比較的多い。
これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI、NaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる。
抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である。
なお、非定型うつ病については、欧米ではモノアミン酸化酵素阻害薬(MAO阻害剤)が第一選択として活用されているが、その激しい副作用と厳しい食事制限のため、2012年現在日本で認可されているものはない。
抗うつ薬の有効性および安全性については議論がある。
うつ病は、治療を行わなくても長期的には自然回復することが多く、数ヶ月以内の自然回復率が50%を越えるため、各種治療法の有効性の判断は難しい。
NIMHの専門家たちは、抗うつ薬が回復までの時間短縮に役立つ可能性はあっても、長期回復率の上昇には役立たないと考えている。
SSRIはプラセボ程度の効果しかないとの見解もある。
●日本うつ病学会のガイドラインによれば、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきである。
寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとしている。
英国国立医療技術評価機構(NICE)の2009年のガイドラインは、危険性/利益の比率が悪いために軽症以下のうつ病に抗うつ薬を使用してはいけない(Do not use antidepressants)としている。
2013年、日本うつ病学会の野村総一郎事務局長によれば、軽症の場合、心理療法を優先とする。
うつ病の重症度が高くなると、薬物療法の有効性があらゆるデータから明確に示されている。
抗うつ薬を服用した重症度の高い患者のうち、効果が見られる患者の割合は70%程度である。
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