人間の感情や感じ方というのは、そのとき直面している問題や状況を、その人がどう捉え、どう考えるかによって大きく変わってくる。
したがって考え方を変えることによって、抱えている問題を乗り越えることは可能なのだ。
本書は、いまアメリカの心理療法の分野で大きな勢力をもち、日本でも急速に広まりつつある認知療法を、うつや不安のなどの症状を抱える一般の読者が、自分で使えるように工夫された練習帳である。
うつ状態や不安である人は、現実を、ありのままの現実よりも悲観的に・破局的に捉えてしまい、苦しみます。認知療法では、その悲観的・破局的なものの捉えかたを修正して患者の気分を楽にすることが目的です(決してネガティブシンキングをポジティブに変えるわけではありません)。
本書では、悲観的な見方を裏付ける根拠と、逆に悲観的な見方を否定する根拠(=反証)を見つけて集める方法を紹介しています。
例えば、ヒゲが濃いことで悩んでいる高校生が、
・悲観的な思考:ヒゲが濃くて恥ずかしい。学校でも同級生の視線が気になってしまう。
・根拠 :実際にヒゲが濃い。男子からもそのことで冷やかされる
・反証 :一部の女子からは「男らしい、ワイルド」と言ってもらえた。
上記のように、(パッと脳裏に浮かぶ自動)思考、それを裏付ける根拠、自動思考を否定する反証を書き出します。
そして最後に、現実をありのままに見つめる「適応的思考」として、
“一部の男子からは冷やかされているが、男らしいと言ってくれる女子もいる”
という考え・ものの見方を自分で導き出すのです。
この本はよく出来ていると思います。
認知療法は、実際にノートに書き出すことが大切なのだと思います。
この練習帳は段階を追ってこれを実践できるようになっています。
思考・気分・行動・身体の関係を調べてみたり、気分を%で測ってみたり…目に見えないものを視覚化することによって、今までもやもやしていた自分象が見えるようになりました。
鬱は辛く苦しい病気だけれど、今では自分を真正面から見つめ直すという貴重な機会を与えられたのだと思っています。
この練習帳で身につけたことは今後の人生でもずっと役に立ってくれることと思います。
認知療法について、3人の主人公が持つそれぞれの悩みと回復の物語を通して、わかりやすく説明されている本です。
僕は自身の生活が本当に苦しい時に、この本やデビッド・D.バーンズ 氏の「いやな気分よ、さようなら」(こちらは、かなり分厚いです)などをよく読んでいました。
ただ、一口に認知療法と言っても、現在ではさまざまな方法や考え方に進歩してきているらしく、必ずしもこれらの本に出ているアプローチだけではないそうです。
いくつかの専門家の方のサイトでは「良い本ではあるものの決して万能ではなく、やはり専門家のアドバイスに従って、人それぞれの症状にあわせたステップを踏むべきだ」といったコメントが載せられていました。
実際のところ、個人的にはこれらの本にずいぶんと助けてもらい、出会えたからこそ何とか乗りこえてこれた…と本当に感謝しているのですが、僕の周囲の人で同じように「悩みを抱えている人」には薦めましたが、受け入れられてもらえなかったのも事実です。
この本のやり方がその人にあっているかどうかだけではなく、本を読む行為そのものが、そういう心理状態の場合簡単ではないことも多いのかもしれません。
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