うつ病を治す方法、鬱病を治す方法
●うつ病のその他の薬物療法
抗うつ薬の治療反応に乏しい場合、別の種類の抗うつ薬への変薬や追加(併用)のほか、炭酸リチウム、甲状腺ホルモン、抗てんかん薬、非定型抗精神病薬の追加(増強療法)、(米国などでは)アンフェタミン、メチルフェニデートなどが試みられる。
米国や日本ではアリピプラゾールも既存治療で十分な効果が認められない場合に限って認可されている。
また電気けいれん療法(ECT)、経頭蓋磁気刺激法(TMS)の適用を検討することもある。
非定型うつ病に対しては、抗うつ薬(SSRIなど)の他、気分安定薬や抗精神病薬が使用される。
不安障害を併発している場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠導入剤を併用することも多い。
抗不安薬・睡眠導入剤としてベンゾジアゼピン系がしばしば用いられるが、これらはベンゾジアゼピン依存症・ベンゾジアゼピン離脱症候群をまねき、うつ病を悪化させる。
各国政府はベンゾジアゼピンの処方を最大でも数週間に限るよう勧告しており、NICEではベンゾジアゼピン系の投与は患者と討議の上で短期間のみに限定され、慢性不安症への投与禁止、薬物依存を起こすため2週間以上の投与禁止と定められている。
うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)によると、薬物治療急性期には抗うつ効果発現までのベンゾジアゼピン系薬物処方は有用であるが、依存性のため長期投与は推奨していない。
●うつ病の薬物療法と自殺
抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺企図の危険が増加する危険性があるとアメリカ食品医薬品局 (FDA) から警告が発せられ、日本でもすべてのSSRIおよびSNRIの抗うつ薬の添付文書に自殺企図のリスク増加に関する注意書きが追加された。
FDAは、子供・青年・18-24歳の若年者に対しては、SSRI治療は自殺願望と自殺的行動について高いリスクが存在すると報告している成人についてはSSRIと自殺リスクの関係は明確ではない。
あるレビューでは関係性が認められておらず、別のレビューではリスクが増加すると報告され、第三のレビューでは25-65歳ではリスクはなく65歳以上では低リスクと報告している。
疾病データ上では、新しいSSRI時代の抗うつ剤の普及により伝統的に自殺リスクの高い国で自殺率の大幅な低下をもたらしていると分かったが、因果関係は確定されていない。
米国では2007年に、SSRIとその他の抗うつ薬について24歳以下の若年者では自殺リスクを増加させる可能性があるというブラックボックス警告がなされた。
同様の警告は日本の厚生労働省からもされている。
米国ではFDAの警告以降に若年者の自殺死者数が増加している。
FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題である。
APAガイドラインでは、抗うつ薬は自殺リスクを減らすエビデンスは小さい、しかしうつ症状の軽減に必要だとしている。
NICEガイドラインによると、2005年4月にヨーロッパ医薬品評価委員会はSSRIとSNRIについて、子供と青年には処方すべきではない(承認適応症を除くがこれは通常の抑うつは含まない)としている。
英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版[注 4]』(2009年)では、うつ病の治療が希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法であるとしている。
●うつ病の精神療法(心理療法)
貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、これらの社会的、状況的原因は薬によって変えることはできないが、薬で心理状況の改善はできる。
これらの社会的、状況的原因は変えることはできないが、これらの場合、心理療法の認知行動療法(CBT)や読書療法などが有効である。
また、心理療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い。
1998年、世界精神医学会(英語版)の「WPA/PTD うつ病性障害教育プログラム」は、高齢者への精神療法の適用について、「精神療法のみ」「精神療法と抗うつ薬の併用」の二つを挙げている。
また、「多様な治療法がある」「再発を予防するために、投薬は継続しなければならない。治療の成功は社会心理的支援がかかせない」としている。
2009年、プラセボ効果を研究するハル大学のアービング・カーシュ博士は「心理療法のみの場合と、心理療法と抗うつ薬を併用する場合の効果の大きさは同じなのだから、なぜ、わざわざ抗うつ薬を持ち込む必要があるのだろうか」と述べている。
両方を併用すれば、抗うつ薬だけを服用するより効果があるが、心理療法を単独で行う以上の効果はない。
英国国立医療技術評価機構(NICE)のガイドラインは心理療法の重要性を認めており、6〜8回の認知行動療法(Cognitive behavioral therapy、CBT)または他の心理療法を推奨している。
具体的には、軽度〜中程度はカウンセリング、再発した場合はCBT、重度の場合はCBTと抗うつ薬との併用を勧めている。
英国政府は臨床試験で効果が証明された認知行動療法をはじめとする心理療法の拡充を開始し、薬物療法に代わる治療法として成果を上げている。
2012年、DSM-IVのアレン・フランセス編纂委員長は「精神科の軽度、中程度の症状には、精神療法が少なくとも薬物療法と同じくらい効果があり、精神療法のほうが持続効果は長く、副作用は少ないのです。
非常に多くの人が必要のない薬物療法を受け、回復に大きく役立つであろう精神療法を受けていないというのは、理不尽であり、経済的動機がそうさせているのだと思います」と述べている。
重症の場合、心理療法単独では十分でない。
NIHは、高齢者の場合、再発防止のため薬物療法の併用が有効であるとしている。
●認知行動療法
外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。
抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。
対人関係療法も認知行動療法の要素を持つ。
考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていく。
認知行動療法は魔法ではない。
うつ病においても、薬物だけで治療した場合に比べ、認知行動療法を併用した方が、症状の改善と再発予防に効果的であると認められている。
現在認知行動療法(CBT)は、子供と青年の抑うつに対して最も研究エビデンスが多く存在する。
CBTと対人関係療法(IPT)は思春期の抑うつに対して勧められる。英国国立医療技術評価機構(NICE)では、18歳以下の人について薬物治療を行う場合はCBT・ICT・家庭セラピーなどといった心理療法を併用しなければならないとしている。
アメリカ精神医学会のガイドラインでは、認知行動療法等の心理療法は患者の初期治療の選択肢として推奨されている。
日本うつ病学会では、認知療法は薬物療法と同時並行的に行われる精神科治療の基本であり、薬物療法に代わる治療法という見方は明らかに間違っていると強調しているが、同時に、認知療法の優位性を示す研究データがあることも暗に認めている。
うつ病の予防・治療日本委員会(JCPTD)では慢性化していない例では抗うつ薬より推奨している。
認知行動療法は、心理職が国家資格化されている国々では、精神科(精神科医、薬物療法中心)、心理療法科(サイコロジスト、心理療法中心)に分かれることがあり、薬物療法と同時並行的に行われるとは限らない。
認知行動療法は12回〜13回程度で終了するので、3ヶ月程度の短期治療では意味があるが、うつ病が3ヶ月を超えて長期化した場合は、薬物療法等の別の治療法を模索する必要がある。
うつ病患者の8割に伴う不眠症であるが、認知の歪みが原因では無いので、認知行動療法の効果は小さい。
不眠症に対しては、別途精神科から睡眠導入剤を処方してもらう必要がある。
ラベル:認知行動療法