抗うつ薬の効果は、副作用に関連するリスクを正当化するために偽薬をしのぐべきである。
うつ病の重症度の評価にハミルトンうつ病評価尺度(英語版)(HAM-D)が、しばしば用いられる。
HAM-Dの17項目のアンケートからの最大スコアは52点である;高いスコアがより重度のうつ病である。
何が薬に対する十分な反応に相当するのかについては十分に確立されていないが、寛解あるいはすべてのうつ症状の実際の除去が目標であり、しかしながら寛解率はまれにしか公表されていない。
症状軽減の割合は、抗うつ薬による46-54%に対して偽薬では31-38%である。
234の研究から、第二世代の13種の抗うつ薬(ブプロピオン、シタロプラム、デスベンラファキシン、デュロキセチン、エスシタロプラム、フルオキセチン(日本では未認可)、フルボキサミン、ミルタザピン、ネファゾドン、パロキセチン、セルトラリン、トラゾドン、ベンラファキシン(日本では開発中止))にて、年齢、性別、民族、併発疾患を考慮しても、うつ病の急性期、継続期、維持期の治療に対して、ほかのものを上回る臨床的に意味のある優越は発見されなかった。
うつ病の薬物治療の有効性について、アメリカ国立精神衛生研究所によって委託されこれまでに最大規模かつ高額な費用がかかった研究、STAR*D (Sequenced Treatment Alternatives to Relieve Depression) が実施された。
その結果の概要は以下である。
STAR*Dの各過程は14週間ごとであり、従って14週後における寛解率や脱落率を表す。
治療の最初の過程の後、2,876人の参加者のうち、27.5%がHAM-Dの点数が7点以下となり寛解に達した。
21%が脱落した。
次の治療の過程の後、残り1,439人の参加者のうち21-30%が寛解した。
310人の参加者だけが研究の継続に協力的であるか継続可能であった。
薬の切り替えでは約25%の患者が寛解に達した。
3番目の治療の過程の後、残り310人の参加者のうち、17.8%が寛解した。
4番目の治療の過程の後、残り109人の参加者のうち、10.1%が寛解した。
1年後の追跡調査で、1085人の寛解した参加者のうち、93%が再発するかこの研究を脱落した。
この研究で比較されたどの薬の間にも、寛解率、反応率、寛解あるいは反応までの期間に、統計的あるいは意味のある臨床的な違いはない。
ブプロピオン徐放錠、ブプロピオン、シタロプラム、リチウム、ミルタザピン、ノルトリプチリン、セルトラリン、トリヨードサイロニン、トラニルシプロミン、ベンラファキシン(日本では開発中止)徐放錠が含まれる。
2008年のランダム化比較試験のレビューは、症状の改善は、SSRIを使用して1週間目の終わりが最高で、いくらかの改善は少なくとも6週間継続したと結論した。
SSRIのフルオキセチン(日本では未認可)、パロキセチン、エスシタロプラムとSNRIデュロキセチンと偽薬では、反応があった場合、偽薬のほうが改善度が緩やかだが、すべてで時間と共に改善していく傾向が見られた。
しかし、抗うつ薬に反応しなかった患者の一部、全体に対する約25%の患者は、HAM-Dスコアが高いままで、8週間では偽薬より著しく高かった。
これは抗うつ薬に反応しない場合、中止すべきことを示唆していると解釈された。
うつ病は類似した症状を呈する異なる病因の病気の集合なので、抗うつ薬の予後が悪いことを示した。
大うつ病性障害の定義は見当違いの可能性がある。
抗うつ薬はうつ病の根本にある原因に効果があるかについて、2002年のレビューは、使用を終了した場合、抗うつ薬がうつ病の再発の危険性を減少させるという根拠がないと結論した。
このレビューの執筆者らは、対人関係療法(IPT)と認知行動療法(CBT)を挙げ、抗うつ薬を心理療法と組み合わせることを提言した。
●副作用
抗うつ薬が効果を表すのは、セロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質に作用するからであるとされている。
しかし、三環系や四環系抗うつ薬では、抗コリン作用、抗α1作用なども併せ持っており、そのために以下のような副作用が生じることがある。
副作用は薬の種類によって細かく異なる為、注意が必要である。
抗コリン作用による口渇、便秘、目のかすみ、排尿困難など
アドレナリンα1受容体遮断作用による低血圧、めまいなど
抗ヒスタミン作用による眠気、体重増加
抗ムスカリン作用による視力調節障害
手足の痙攣・振戦、全身の痺れなど(重症になると一ヶ月ほど痺れが続く場合もある)
服用開始直後の吐き気については、これについては制吐剤(ガスモチンなど)や六君子湯などの併用によって緩和することが可能である。
性欲減退についてはDNRIとの併用で解消できる場合があることが報告されている。
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