●物質誘発性気分障害
気分障害は、その病因が向精神薬やほかの化学物質の直接の生理作用にさかのぼることが可能な場合、あるいは物質の毒性や離脱と同時に生じた気分障害は、物質誘発性に分類される。
気分障害が物質使用障害と併発している場合もである。
物質誘発性気分障害は、躁、軽躁、混合、あるいはうつ病エピソードの特徴を有する。
多くの物質は多様な気分障害を生じさせることができる。
例として、アンフェタミン、メタンフェタミン、コカインのような覚醒剤は躁や軽躁、混合状態、うつ病のエピソードの原因となることが可能である。
●アルコール誘発性気分障害
アルコール依存症を伴う大量飲酒者や患者では、大うつ病性障害が高率で生じる。
アルコールの乱用と抑うつの発症が、先行する抑うつの自己治療的なものであるかについては議論があった。
しかし最近の研究は、いくつかの事例では事実だろうし、アルコールの乱用は大量飲酒者の多くが抑うつを発症する直接の原因になると結論している。
参加者の生活上のストレスの多い出来事の間、気分不快尺度を用いて評価された研究が行われた。
さらに、逸脱集団への加入、失業、パートナーの物質の使用とその刑罰が評価された。
その結果、アルコールに関連した問題として高い自殺率があった。
詳細な患者の既往歴によりアルコールの摂取に関連しない抑うつと、アルコール誘発性抑うつとを区別することは可能である。
アルコール乱用関連の抑うつと他の精神的問題は、脳内化学物質の歪みに起因する可能性があり、断酒後に誘発される傾向がある。
●ベンゾジアゼピン誘発性気分障害
バリウムやリブリウムのようなベンゾジアゼピン系の長期間の使用は、抑うつに関与したり、アルコールの脳における影響に類似している可能性がある。
大うつ病性障害はまた、長期離脱症候群の一部あるいはベンゾジアゼピン系の慢性的な使用の結果として発症する。
ベンゾジアゼピン系は、不眠症、不安、筋肉けいれんの治療に広く用いられる医薬品である。
アルコールと併用した場合、セロトニンやノルエピネフリンの濃度の増加のような神経化学上のベンゾジアゼピン系の作用で、抑うつを増す反応があると考えられている。
大うつ病性障害は、ベンゾジアゼピン系の離脱症状の一部として生じる可能性がある。
ベンゾジアゼピン系の依存症を有する患者における長期間の調査研究において、2人にだけ先行した抑うつ障害があり、長期にわたるベンゾジアゼピン系医薬品により10人の患者(20%)に過量摂取があった。
段階的に離脱する計画から1年後、さらなる過量摂取をした患者はいなかった。
ベンゾジアゼピン系からの離脱の結果である抑うつは、通常は数か月後に治まるが、少数の例では6〜12か月にわたり存続する可能性がある。
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