2014年05月21日

うつ病の症状

■■■■■ うつ病の症状 ■■■■■


あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような症状を呈するものまである。

DSM-IVにおける大うつ病性障害の診断基準では、「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」2つの主要症状が基本となる。

また、精神症状と共に身体的な症状を生じる。身体的な症状は、診断に先立って訴えられることもある。


●精神症状

ボーっとすることが多くなり、口数が少なくなる。

学校・会社・部活動では、休みがちになったり、不登校になる。

集中力、気力、意欲がなくなり、運動神経や記憶力が低下し、勉強ができなくなる。

人の話を聞けなくなる。「どうせ自分なんか価値の無い存在だ」と考えるようになるなど、自尊心が低下する。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどである。

「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態である。

この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされている。

これら主要症状に加えて、「抑うつ気分」と類似した症状として、「自分には何の価値もないと感じる無価値感」、「罪悪感」、「自殺念慮・希死念慮」などがあり、その結果として自殺に至る例もある。



●身体的症状

頭が割れるような頭痛。

不眠症などの睡眠障害。

吐き気。少しの動作で疲れるようになってしまう。

消化器系の疾患で急性胃炎、慢性胃炎、胃潰瘍。摂

食障害に伴い、食欲不振と体重の減少あるいは過食による体重増加。


全身の様々な部位の痛み(腰痛、頭痛など)訴えとしては「食欲がなく体重も減り、眠れなくて、いらいらしてじっとしていられない」もしくは「変に食欲が出て食べ過ぎになり、いつも眠たく寝てばかりいて、体を動かせない」というものである。

睡眠状態と食欲状態はうつ病の問診項目である。

うつ病の約8割に不眠が、1割に過眠が見られる。

不眠症によりうつ病は2.1倍になる。



●その他人

付き合いを避けるようになるなど、対人関係が悪化し、さらに病気を悪化させるという悪循環が起きやすい。

不眠症の放置により、生活リズムが乱れやすい。

疾患にともなう作業能力の低下、失職、学業不振、退学等、生活適応面に及ぼす影響も甚大である。

posted by ホーライ at 07:24| 北京 | うつ病の症状 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(5)『いやな気分よ、さようなら』野村 総一郎ら著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


『いやな気分よ、さようなら』は、発売以来、英語版で300万部以上売れ、「うつ病」のバイブルと言われている。

抑うつを改善し、気分をコントロールするための認知療法を紹介する。

最近の大規模な調査によると、『いやな気分よ、さようなら』を読んだうつ病の患者さんの70%が、他の治療を併用することなく4週間以内に改善し、3年後でもその良い状態を維持していた。

この効果は、薬物療法や他の精神療法と比べても、優れているものと言えよう。

抑うつや不安な気分を克服するための最も効果的な科学的方法を、本書を読むことにより、学んでください。

増補改訂に際し、最近の新しい薬の話や脳内のメカニズムについて、分かりやすく詳しい説明が追加されている。



認知療法の枠を越えた画期的な本。

どうすれば鬱や無気力が治るのか、恋人や夫からの愛情がなくなった時にどうすればいいのか、愛する人がなくなった絶望感から早く抜け出す方法、批判してくる相手に対する最適な話し合いテクニックetc...(もっと載ってます)

人生の様々な問題に対する対処方法が書いてある。

鬱度チェックもついているので自分の鬱度を随時チェックできる。

めちゃくちゃ重い鬱病の人は本を読むことすら出来ないとは思うけど、本を読める力のある人は一日一章ずつ、継続して読むことを勧めます。


一度読むだけだとまた忘れるので、騙されたと思ってとにかく続けて下さい。

認知療法用のノートも併せて作ると最適です(トリプルカラム法:本書参照)

もっともっと多くの人に鬱から立ち直って欲しい。



これまで何十冊も「元気が出る」系の本を読みましたが、ほとんどが根拠のない精神諭の押し付けに過ぎませんでした。

しかしこの本は学術的バックグラウンドを元に、論理的、実践的かつ包括的で、非常に内容が濃く、巷の自己啓発本とは一線を画しています。

私はこれですっかり元気になりました。


原書が米国で出版されたのは20年以上も前ですが、当時200万部のベストセラーになっただけあって、内容も古さを感じさせません。

買ってきた日から取り組めて、気分改善だけでなく周囲の問題解決にも役立つ優れもの。

うつの予防法、心の成長を語る部分は本書のクライマックスですが、歯切れよく鋭い示唆に満ちており圧巻です。

サブタイトルに抑うつ克服法と書いてありますが、もっと幅広く人生における悩み全般に適用できる、他に類を見ない良書だと思います。

一般書コーナーに置いてほしいくらいです。



原書はもう四半世紀売れ続けてる認知療法の大ベストセラーです。

また自分で本を読んでやるビブリオセラピー(読書療法)の研究でも、いちばんよく使われる本でもあります。
 
認知療法を中心に、実にさまざまな技法やTips(小ネタ)、エピソードが満載で、多くの人が思い思いのやり方で、いろんな箇所を参考にしているようです。


とりあえずは第3章と第4章だけ読めば、認知療法は始められます。

そして困ったことや行き詰まったことがあるたびに、ページを開けば、どこかに切り抜けるためのヒントややり過ごすための方法が出てきます。

読み追えた後にも、繰り返し参考になる本です。 (認知療法の辞書のように使える。)








ラベル:野村総一郎
posted by ホーライ at 06:34| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。鬱病を解説している本。鬱病の方にお勧めの本。(4)『ツレがうつになりまして』細川貂々著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


スーパーサラリーマンだったツレがある日、突然「死にたい」とつぶやいた。

会社の激務とストレスでうつ病になってしまったのだ。

明るくがんばりやだったツレが、後ろ向きのがんばれない人間になった。

もう元気だったツレは戻ってこないの?

病気と闘う夫を愛とユーモアで支える日々を描き、大ベストセラーとなった感動の純愛コミックエッセイ。



うつ病歴 結構経ちます。

今、減薬中で、かなり良いトコまで来ています。

私が通院している病院に置いてあり、待合室で読みました。

とっても読みやすいので、1日もあれば読めてしまう内容です。

そうして、「これも!」「あ!これも!」って、私が経験したこと全てが書いてありました。



『普通の人には 息を吸う程簡単なこと』が、私にはできなかった。

『渦中の人』が読むには、もしかしたら辛いかも知れません。(ずいぶん調子良くなった今でも、読んでドキドキしましたから...

ただ、「なぁんだ!自分だけじゃないんだ!」ってことが解って、自分を責めたり、現状に焦ったりしなくなる効果は あると思います。)


でも、周囲の人には読んで貰うべきです!


『うつ』でない人には 絶対理解して貰えない症状 (自分で理由が説明できない 自分の行動の全て)を読んで貰うだけで、「今の私は、ツレさんと同じなの」と 私に代わって説明してくれる。

もっと早く この本に出会っていたら、周囲の不理解に苦しまなくても良かったかも。



今、辛い人へ

周囲の理解を得る為に、この本はお勧めです!

また、今できないことの全てが『うつ』の症状である ということが解ります。

どうか自分を責めないであげて下さいね。



『うつ』の人を身近でサポートしている人へ

『うつ』を経験した人じゃないと理解できない色々な出来事が書いてあります。

理解できても できなくても、この書いてあるそのものが 『うつ』の人の『普通』なのです。







posted by ホーライ at 06:25| 北京 | うつ病患者の家族 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本(3)『うつ病をなおす』野村総一郎著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


分かってきたことは、うつ病の本質は絶望にあるのではないことである。

絶望は病気ゆえに感じる「症状」であって、症状である以上、医学的な治療が解決の切り札になる。

そしてまた、うつ病の治療態勢はここ10年で見違えるほど整備されてきているのだ。

もっとも信頼される名医が説く、なぜ「うつ」になるのか、どうすれば回復するか。



現役専門医による鬱病の解説書。

私はもう何年も前に患って、最近は病気だったときの記憶をあまり思い出せないのですが、本書は当時を思い出しながら、それでいてとっても楽しく読めました。

本書が楽しいのは、現役医師のホンネがそこかしこに漏れ出ているからです。

こういう広く一般に読まれる本を書く専門家は、あまりホンネを出さないものですが、この人は違います。


特定の薬に対して「私もこの二つの薬は好きである」なんて、思いっきり個人的なコメントをしている。

私の乏しい経験では、良い医師は個人的な感情を押し殺さない。

万能の医師ではなく欠点ある一人の人間として患者に対峙してくれる。

彼の個性をフックにして、患者である私は医師に人間的信頼を抱き、自分への信頼を回復していきました。



本書は最新の治療について非常にきちんと書かれています。

まず薬物療法についてしっかりと書かれてますから、患者は「自分が今どんな治療を受けているか」を理解する助けになるでしょう。

その次に通電療法。そして認知療法。

良いのは、精神分析など日本ではほとんど実施されていない・効果も薄い・高価で時間がかかる治療法についてはムダにページを割いていないこと。

精神療法は現在の日本では現実的な選択肢ではありませんが、いたずらに投薬を「薬漬け」と批判する人たちが、さも投薬より効果があるみたいな幻想を振りまいています。

本書はそうした幻想に与しません。

あくまでも現場レベルでの最善を紹介しています。


私は本書の姿勢に強く共感し、支持します。



先に同じ講談社現代新書の笠原嘉『軽症うつ病』を読み、その文章の読みやすさ、内容の分かりやすさに感動したが、同じ新書で本書が出た事を知り、笠原版の続編を読むようなつもりでさっそく読み始めると、これもまた驚くほどの読みやすさ。

かといって内容が薄いわけではない。

勿論、初めて読む人のために前半の症例紹介などでは笠原版と重なる記述もあるが、著者が異なるとやはり視点が少し異なり、またズンズン読んでしまえる。

本書の最大の特色はタイトルが示す通り、治療法に比較的重点を置いて書かれていることだ。

特に4章「うつ病の治療メニュー」に含まれる「主な抗うつ薬」(pp.126~132)や「気分安定薬の解説」(pp.137~140)は代表的な薬の名称と共に特徴や副作用も述べられていて、現在通院服薬中の患者さんにとっては非常に参考になるだろう。

又、個人的にはpp.145~149に解説されている「通電療法(=電気ショック療法)」なるものに興味がわいて思わず自分も受けてみたくなった。

筆者の野村氏も、同僚に「自分がもしうつ病になったら、真っ先に通電療法を受けさせてくれ」と頼んでいるらしい。


ちなみに筆者の「野村総一郎」さんは、私の長女の同級生のお父さんでもある。







ラベル:野村総一郎
posted by ホーライ at 06:17| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。(2)『軽症うつ病』笠原嘉著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。うつ病患者の家族のための本。


生真面目で心やさしい人々をおそうゆううつ、不安。

おっくう感。軽症化しつつふえている理由なき現代的うつ状態への対処法と立ち直りの道筋を明快に説く。

第3の「ゆううつ」――脳に原因があっておこる「ゆううつ」と、心理的な悩みにひきつづきおこる「ゆううつ」……実はもうひとつ、第3の「ゆううつ」があって、話をいささか複雑にするのです。

私たちはこの第3を「内因性のゆううつ」と呼んでいます。

内因性とは文字どおり「内側からひとりでに」「目覚まし時計が一定の時刻になると鳴るように」おこるという意味です。

脳に大きな障害はない。

原因となりそうな身体病もない。

たとえば、うつ気分をひきおこすことの知られている内分泌疾患もない。

逆にまた、そういうことがあれば誰だってゆううつになるであろうような、はっきりした心因的環境的な出来事も先行していない。

ひとりでにおこってくるというしかない。

そういう場合です。――


この本は、うつ病の患者さん本人向けのものだと思います。

本のタイトルにある通り、主に「軽症」の方を想定しています。

さらに、患者さんの年齢層としては、うつ病の好発期である中高年の方々を対象としているようです。

しかし、これらにあてはまらない方にとっては役に立たないということではありません。


私は、今現在うつ病で苦しんでいらっしゃる方で、何とか平易な文章ならば読むことができそうだ、という方全員におすすめします。

この本をどこかご自分のすぐ手の届くところに置いておいておくことで、現実にかかっていらっしゃる先生にすぐお会いになれないときでも、すぐに専門家のアドバイスを得ることのできるような、安心感を得ることができると思います。

患者さん本位の、優しい口調で書かれています。

よくうつ病の概説書にありがちな、患者さんを説教するような部分はまったくといってもいいほど、見当たりません。

患者さんにとっては、安心して読める本だと思います。

病気を見つめてみるという意味でも、ぜひ一度手にお取りになってみてはいかがでしょうか。

なお、他の方々も指摘されているように、この本はうつ病について客観的な知識を求めている方には、内容的にやや物足りない感じがするかもしれません。

そのような方には、野村総一郎先生の『うつ病をなおす』の方をおすすめします。

こちらの方がより広範囲のうつ病を対象としており、かつ詳細な記述がなされています。







posted by ホーライ at 06:04| 北京 | ライフワークを考える | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の疫学・統計

■■■■■ うつ病の疫学・統計 ■■■■■ 


厚生労働省によれば、うつ病の12カ月有病率(過去12カ月に経験した者の割合)は世界では1〜8%、日本では12カ月有病率が1〜〜%である。

また、生涯のうちにうつ病にかかる可能性については、川上によれば3〜16%である。

日本では、水野らによれば12ヶ月有病率は3.1パーセント、川上によれば生涯有病率6.7パーセントとされている。

これらの研究結果から、ある時点ではだいたい50人から35人に1人、生涯の間には15人から7人に1人がうつ病にかかると考えられている。


●性差

男性より女性のほうが2倍ほどうつ病になりやすいとされている。

閉経や子どもの自立による喪失体験、PMSによるストレス、男性より寿命が長いことによる配偶者との死別などによる部分も少なくはないと思われ、社会生活によるストレスが多い男性にも普通に見られる。

女性の発症率の高さについては、妊娠・出産期・閉経期・月経前(PMS、PMDD、セロトニンの減少)の女性ホルモン、セロトニンの激減がマタニティブルーや産後うつに関与している可能性がある。

産後うつは乳児の育児時の睡眠不足もある。

日本ではうつ病が増加傾向にあるが、女性の高齢化による自然増もある。



●患者数とその推移

日本の患者数の少なさについては、受診率の低さが原因としてあげられる。

日本の患者数の年度ごとの増加傾向には、高齢化やうつ病についての啓発活動による受診率の増加が原因としてあげられる。

うつ病の患者数が20世紀になって増加していることについて、SSRIの導入後6年間で2倍に増えるという経験則があり、製薬会社のキャンペーンが影響している、とした説もある。

「副作用の少ない」抗うつ薬の普及に伴い、うつ病と診断される患者数が増加している側面がある。



●子どものうつ病

子どもでもうつになる場合があり、子どもの大うつ病の時点有病率は児童期で0.1から2.6パーセント、青年期で0.7から4.7パーセントとされている。

いじめ等の自殺行為は、重度に発展したうつ病による可能性もある。

うつ気分が、イライラする、怒りっぽくなる、落ち着きがなくなるなどの形で表現されることも多い。



●自殺企図者とうつ病の統計

重大な自殺を図った者の75%に精神疾患があり、その46%はうつ病である。



●喫煙との関連

製薬会社のファイザーが2009年6月に10年以上の喫煙歴がある40 - 90歳の男女計600人を対象にインターネットで行った調査によると、ニコチン依存症の人の16.8パーセントにはうつ病やうつ状態の疑いがあり、ニコチン依存症でない人でのその割合は6.3パーセントのため、ニコチン依存症の人ほど、うつ病・うつ状態の可能性が高いと報告している。

また、典型的な抗うつ薬であるイミプラミンについて、喫煙者は効果が半減するとの指摘がなされている。

ただし、喫煙者であって重症のうつ病の間の禁煙は医師との相談が必要である。

ニコチン離脱時にうつ病が再燃しやすい。


posted by ホーライ at 05:54| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。(1)『森田療法』岩井寛著

うつ病を治すための本。うつ病を解説している本。うつ病の方にお勧めの本。


僕は、本当にこの本に救われた。

大袈裟ではなく、文字通り、『命を救われた』。


他人の視線に怯える対人恐怖症。強迫観念や不安発作、不眠など、心身の不快や適応困難に悩む人は多い。

こころに潜む不安や葛藤を“異物”として排除するのではなく、「あるがまま」に受け入れ、「目的本位」の行動をとることによって、すこやかな自己実現をめざす森田療法は、神経症からの解放のみならず、日常人のメンタル・ヘルスの実践法として、有益なヒントを提供する。


新書本にありがちな平板な概説書かと思い大して期待せずに読み始めたが、さにあらず、筆者の魂のこもった壮絶な書だった。

筆者は、末期癌の病床で視力をも含む体の機能の過半を失いながら、自己の生きる意味を追求するため、口述筆記によって本書を執筆した。

たとえ不安や恐怖に押しつぶされそうになっても、たとえ絶対絶命の状況に置かれても、それを「あるがまま」に受け入れ、自己実現のために一歩でも踏み出していく、そうした森田療法の精神を本書の執筆それ自体により筆者は具現化して見せたのである。

本書の中で紹介される幾多のエピソードは、筆者の人生の記録そのものである。

数度の流産経験を経てやっと授かった我が子が、生後間もなくして死亡する。

その際、悲しみに満ち溢れつつ、筆者は赤ん坊の死顔を夢中でスケッチブックに描きとめた。

傍目には異常とも思えるこの筆者の行動もまた、筆者流に解釈した森田療法の実践であった。

これほど読み手の心を揺さぶる新書本を私は他に知らない。

魂の書である。




世界的に知られている森田療法は、神経症に伴う不安、恐れを、「あるがまま」に受け入れる事を説く。

しかし、表面的に受け取ってしまっては、真の「あるがまま」の意味は伝わりにくく、誤解の恐れもある。

筆者は、自身の体験や治療した患者の例を通じて、判りやすく、具体的に森田療法について解き明かしており、森田療法への格好の入門書となろう。


「あるがまま」を受け止めるという古くから有る精神科領域の「森田療法」の紹介である。
 
この「あるがまま」を受け止める、というのは言うは易く、行うは難しだ。

そこを、臨床経験豊富な精神科医が具体的に解きほぐして解説してくれる。

うつ病などには、今ではかなり良い薬が出ているが、この本により僕も何度か命を救われた。

ストレスの多い、現代人にとっては、日頃から「あるがまま」を「積極的に、肯定的に受け入れる方法」を実践することが、自分を守ることになる。
 
そんな方法を筆者が自らは死の床にいながらにして、生き残っている僕らに残してくれた現代人必読の一冊である。







ラベル:森田療法
posted by ホーライ at 05:45| 北京 | うつ病を治すための本 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病の原因(2)

■■■■■ うつ病の原因(2) ■■■■■

●脳の海馬領域における神経損傷仮説

うつ病の神経損傷仮説:

近年MRIなどの画像診断の進歩に伴い、うつ病において、脳の海馬領域での神経損傷があるのではないかという仮説が唱えられている。

そして、このような海馬の神経損傷には、遺伝子レベルでの基礎が存在するとも言われている。


心的外傷体験が海馬神経損傷の原因となるという仮説:

また、海馬の神経損傷は幼少期の心的外傷体験を持つ症例に認められるとの研究結果から、神経損傷が幼少期の体験によってもたらされ、それがうつ病発病の基礎となっているとの仮説もある。

コルチゾール(cortisol) は副腎皮質ホルモンであり、ストレスによっても発散される。

分泌される量によっては、血圧や血糖レベルを高め、免疫機能の低下や不妊をもたらす。

また、このコルチゾールは、過剰なストレスにより多量に分泌された場合、脳の海馬を萎縮させることが、近年心的外傷後ストレス障害(PTSD)患者の脳のMRIなどを例として観察されている。

心理的ストレスを長期間受け続けるとコルチゾールの分泌により、海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)・うつ病の患者にはその萎縮が確認される。




【心理学的仮説】

●病前性格論

心理学的仮説としては、フーベルトゥス・テレンバッハの唱えたメランコリー親和型性格が有名である。

これは、几帳面・生真面目・小心な性格を示すメランコリー親和型性格を持つ人が、職場での昇進などをきっかけに仕事の範囲が広がると、責任感から無理を重ね、うつ病を発症するという仮説である。

しかし、このような生活上の悩みがうつの原因になるとしても、すべての症例がこの仮説によって説明できるわけではない。

例えば、家族の一員の死により深刻なうつ症状に陥る人もいれば、短期間で乗り越える人もいる。

一方で、特段の理由もなく深刻なうつを発症するケースもある。



うつ病患者にメランコリー親和型性格者が有意に多いという統計学的エビデンスは数多く報告されているが、それらの値は現代に近づくにつれて減少傾向を示しており、現在ではうつ病患者に特徴的な性格傾向はほとんど見られなくなっている。


うつ病にかかりやすい病前性格として、日本では主にメランコリー親和型性格、執着性格、循環性格などが提唱されてきた。

しかし、近年ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、これらの性格に該当しないディスチミア親和型と呼ばれる一群の患者が増加しているとされる。

ディスチミア親和型はパーソナリティ障害ないし、パーソナリティ障害傾向を持つ人々が多く、自己愛的・回避的な問題を抱えるケースが報告されている。


なお、現代ではDSMの普及によって大うつ病性障害にはあらゆる抑うつ症状が混合してしまっており、病前性格の評価そのものが困難になってきている。

成因を問わない操作診断によって生じた混乱に対し、ハゴップ・アキスカルやジャーマン・ベリオスをはじめとした英米圏の学者達は連名でうつ病概念を整理する必要性を説いており、大うつ病性障害からメランコリアを切り離すことについて提言を行っている。





【その他うつ病の発症・経過に影響する因子】

●薬物・アルコールとの関連

DSM-IVでは、その原因が「物質の直接的な精神的作用」に起因すると判断される場合は、気分障害の診断を下すことはできないとしている。

大うつ病に似た症状が物質乱用や薬物有害反応によって起こされていると判断される場合、それは"substance-induced mood disturbance"と定義される。


アルコール依存症または過度のアルコール消費は、大幅に大うつ病の発症リスクを増加させる。

また、逆にうつ病が原因となってアルコール依存症になる場合もある。



ベンゾジアゼピンは不安障害や不眠症の人が服用する薬である。

アルコールと同様に、ベンゾジアゼピンはうつ病発症リスクを増加させる。

この種類の薬は不眠・不安・筋肉痙攣に広く使用されている。

このリスク増加はセロトニンとノルエピネフリンの減少など、薬物の神経化学への効果が一因である可能性がある。

ベンゾジアゼピン系の慢性使用も抑うつを悪化させ、うつ症状は長期離脱症候群の1つである可能性がある。


厚生労働科学研究によれば、実際には睡眠導入剤、抗不安薬としてベンゾジアゼピン系などが多く処方されているが、長期の安全性については疑問符があるため、適正使用ガイドライン等が検討課題であると述べられている。



●社会的要因

貧困と社会的孤立は、一般的に精神衛生上の問題のリスク増加と関連している。

児童虐待(物理的、感情的、性的、またはネグレクト)も、後年になってうつ病を発症するリスクの増加に関連付けられている。

成人では、ストレスの多い生活上の出来事が強く大うつ病エピソードの発症に関連付けられている。

生活上のストレスがうつ病につながる可能性が増加したり、社会的支援の欠如がうつ病につながる可能性がある。

後述する認知行動療法は、考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていくものである。

ライフイベントの影響(閉経、財政難、仕事の問題、人間関係のトラブル、近親者との死別による分離等



posted by ホーライ at 05:35| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年05月20日

うつ病の分類(2)

●うつ病の分類(2)

■DSM-IV-TRにおけるうつ病(大うつ病性障害)のサブタイプ

メランコリー型うつ病 (en:Melancholic depression)

非定型うつ病 (en:Atypical depression)

緊張性うつ病 (en:Catatonia)

産後うつ病 (en:Postpartum depression)(DSM-5では出産前後のうつ病)

季節性情動障害 (en:Seasonal affective disorder)




■DSM-5で追加されたうつ病(大うつ病性障害)のサブタイプ

破壊的気分調節不全障害(児童の持続的・反復的な不機嫌)Disruptive Mood Dysregulation Disorder

月経前不快障害(月経前の気分不安定)(en:Premenstrual Dysphoric Disorder)



●非定型うつ病

通常のうつ病(メランコリー型うつ)は気分が落ち込む状態が長期にわたって持続して気分が明るくならないが、好きなことをしているときなどには気分が明るくなるようなタイプのうつ病は非定型うつといわれ、うつ病の半分程度は非定型とされる。

ただし、非定型うつ病は双極性障害の初期症状と区別しにくいため、とりわけ親族に双極性障害患者がいる場合は、その可能性を考慮する必要がある。

DSM-IV-TR/DSM-5の「非定型」の基準

上記の定義に加えて下記が2つ以上あり、メランコリー型または緊張病性の特徴を満たさない。

1.顕著な体重増加または過食

2.過眠

3.手足や体が鉛の様に重くなる事がある

4.対人関係に過敏



女性に2〜3倍多い。

高齢者はメランコリー型うつが多く、若年者は非定型うつが多い。




●新型うつ病(現代型うつ病)

従前からの典型的なうつ病とは異なる特徴を持つものの総称で、現代型うつ病とも呼ばれる。

従来のメランコリー親和型の性格標識を持たない患者を指すことが多い。

大うつ病性障害の診断基準を満たし、日本のマスメディアなどで上記の非定型うつ病とほぼ同義に扱われているが、専門用語ではなく、精神医学的に厳密な定義はない。




●うつ病概念の拡大

新しいタイプのうつ病を理解するには、日本における精神医学の発展の歴史を知る必要がある。

戦前から日本はドイツ精神医学の影響を受けており、うつ病=内因性うつ病(メランコリー親和型うつ病)と捉えられてきた。

しかし戦後アメリカ精神医学が主流となり、各国と同様に日本においても操作的診断学が導入されるようになると、あらゆる抑うつ症状が全て「大うつ病性障害」に包含されることとなった。

従来の伝統的診断学においては、病前性格論・生活史診断などを組み合わせてうつ病の鑑別診断が行われており、カルテには薬物が奏効する「内因性うつ病」、心理学的問題の解決が求められる「神経症性うつ病」、「境界性パーソナリティ障害に伴う抑うつ症状」などと記されていた。

しかし操作的診断基準とともにうつ病圏が拡大されると、成因が問われず様々な精神疾患の抑うつ症状が「大うつ病性障害」へと混入して診断されることとなった。

その結果成因が問われないままにうつ病と診断がなされ治療されてきたのが、近年増加した新しいタイプのうつ病である。

症候学的には大うつ病性障害の診断基準を満たすため、確かに「うつ病」ではあるが、必ずしも伝統的診断における「うつ病(内因性うつ病)」とは限らないため、抗うつ薬による薬物療法の効果は限局的である。

パーソナリティ障害の合併例には薬物療法と精神療法の併用が勧められており、気分安定薬やSSRI、少量の抗精神病薬が症状の軽減に有効であることが報告されている。



●従来とは対極にある性格標識

これまで従来のメランコリー親和型の性格標識を持たないうつ病患者が数多く報告されてきた。

笠原の退却神経症[、阿倍の未熟型うつ病、広瀬の逃避型抑うつ、松浪の現代型うつ病などである。

これらは提唱者によって少しずつ特徴の捉え方が異なるが、新しいタイプのうつ病の一部である。

樽味はメランコリー親和型と対比させたディスチミア親和型として定義し、市橋は内因性うつ病ではないが、症候学的には大うつ病性障害の操作的診断基準を満たすことから、非うつ病性うつ病と定義した。

樋口はその構造から、境界性うつ病および自己愛性うつ病と定義した。


この種の新しいタイプのうつ病に共通してみられる心性は、役割意識に乏しく、他責的・他罰的で、薬物が奏効せず、遷延化するという点である。

それらの多くはパーソナリティ障害(パーソナリティ障害の傾向を持つ者)と考えられており、多分に自己愛的、回避的心性を読み取ることができる。

なお、諸外国においても同様に成因を問わない操作診断によるうつ病概念の混乱が生じており、Akiskal、Berrios、Donald Klein、Healy ら英米圏を代表する学者13名は連名で、DSMを発行しているアメリカ精神医学会の学会誌である『The American Journal of Psychiatry』において、大うつ病性障害からメランコリアを切り離し、1つの臨床単位として独立させる必要性を提言している。



■■■■■ 原因 ■■■■■

うつ病の発病メカニズムは未だ不明である。

うつ病の原因は単一のメカニズムで説明されるとは限らず、複数の病態からなる症候群である可能性もある。

現在までに、うつ病の発病メカニズムを説明するために、複数の、生物学的あるいは心理学的な仮説が提唱されている。


●生物学的仮説

生物学的仮説としては、薬物の有効性から考え出されたモノアミン仮説、死後脳の解剖結果に基づく仮説、低コレステロールがうつおよび自殺のリスクを高めるとの調査結果、MRIなどの画像診断所見に基づく仮説などがあり、2013年現在も活発に研究が行われている。

モノアミン仮説のうち、近年はSSRIとよばれるセロトニンの代謝に関係した薬物の売り上げ増加に伴い、セロトニン仮説がよく語られる。

また、海馬の神経損傷も論じられている。

しかしながら、臨床的治療場面を大きく変えるほどの影響力のある生物学的な基礎研究はなく、決定的な結論は得られていない。


臨床現場では抗うつ薬を投与することでセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質の働きを促す治療が行われているが、あくまで対症療法的なものであり、成因の解明は新たな治療薬の開発に役立つことが期待されている。



●モノアミン仮説

1956年、抗結核薬であるイプロニアジド、統合失調症薬として開発中であったイミプラミンが、KlineやKuhnにより抗うつ作用も有することが発見された。

発見当初は作用機序は明らかにされておらず、他の治療に使われる薬物の薬効が偶然発見されたものであった。

その後イプロニアジドからモノアミン酸化酵素(MAO)阻害作用、イミプラミンにノルアドレナリン・セロトニンの再取り込み阻害作用があることが発見された。

その後これらの薬物に類似の作用機序を持つ薬物が多く開発され、抗うつ作用を有することが臨床試験の結果明らかなった。

よってモノアミン仮説とは、大うつ病性障害などのうつ状態は、モノアミン類、ノルアドレナリン、セロトニンなどの神経伝達物質の低下によって起こるとした仮説である。

しかし脳内の病態が明らかにされていない以上、逆の病態が大うつ病性障害の根本原因と結論付けることは出来ず、あくまで仮説にとどまっている。

さらにこの仮説に対する反論としては、シナプス間隙のノルアドレナリンやセロトニンの低下がうつ病の原因であるとすれば、抗うつ薬は即効性があってしかるべきである。

うつの改善には最低2週間要することを考えると、この意見は一理あると言える。

posted by ホーライ at 08:05| 北京 | うつ病の解説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

うつ病を治す方法、鬱病を治す方法

そもそもうつ病とは?


うつ病(うつびょう、鬱病、欝病)とは、精神障害の一種であり、抑うつ気分、意欲・興味・精神活動の低下、焦燥(しょうそう)、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患である。


双極性障害(躁うつ病)と区別するために「単極性うつ病」と呼ばれることもある




●うつ病の定義


うつ病は他の精神疾患と同様、原因は特定されていないため、原因によってうつ病を分類したり定義したりすることは現時点では困難である。


「うつ病」に相当する英語は“depression”であるが、“depression”は疾病全体を指すこともあれば抑うつ気分などの症状、さらには一時的な落ち込みなどを指すこともあり、日本語の「うつ病」と完全に同一ではない。




以前は内因が関与している内因性うつ病と心因が強く関与している心因性うつ病(神経症性うつ病)とに分けて論じられることが一般的であった。


しかし上述のように原因による分類・定義が困難なため、1980年にアメリカ精神医学会が「精神障害の分類と統計の手引第3版(DSM-III)」を発表してからは、これら操作的診断基準によって分類することが一般的となった(#分類の項も参照)。




「うつ病」という用語は、狭い意味では「精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-IV)」における、大うつ病性障害(英語:major depressive disorder)に相当するものを指しているが、広い意味でのうつ病は、一般的には抑うつ症状が前景にたっている精神医学的障害を含める。


そのなかには気分変調性障害をはじめとする様々なカテゴリーが含まれている。




操作的診断による「大うつ病性障害」などの概念と、従来診断による「内因性うつ病」などは同じ「うつ病」であっても異なる概念であるが、このことが専門家の間でさえもあまり意識されずに使用されている場合があり、時にはそれを混交して使用しているものも多い。


そのため一般社会でも、精神医学会においても、うつ病に対する大きな混乱が生まれており、注意が必要である。


この記事では、主には(DSM-IVおよびそのテキスト改訂版であるDSM-IV-TRに基づく)「大うつ病性障害」について記述しているが、記事内でも様々な定義による「うつ病」の概念が使用されている。





●「うつ状態」と「うつ病」


うつ状態、抑うつ症状を呈するからといって、うつ病であるとは限らない。


抑うつ状態は、精神医療において最も頻繁に見られる状態像であり、診療においては「熱が38度ある」程度の情報でしかない。


状態像と診断名は1対1対応するものではなく、抑うつ状態は、うつ病以外にも様々な原因によって引き起こされる(#鑑別疾患参照)。


また、うつ状態のうち、大うつ病エピソードとして扱われるのは、DSM-IVの診断基準に従って、「薬物依存以外、身体疾患以外、死別反応以外のもので、2週間以上にわたり毎日続き、生活の機能障害を呈している。」というある程度の重症度を呈するものである。


DSM-5では「死別反応」もうつ病に該当する様になった。





●うつ病の病態


うつ病は、単一の疾患ではなく症候群であり、さまざまな病因による亜型を含むと考えられる。


いわゆる「典型的」なうつ病(内因性うつ病)の場合、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内の神経伝達物質の働きが悪くなっていると推測されている(#モノアミン仮説)。


性格や考え方の問題ではないと考えられている。


この場合、通常は抗うつ薬がよく効き、治療しなくても時間が解決する場合もあると言われている。


一方、心理的要因が多いと思われるうつ病では、原因となった葛藤の解決や、葛藤状況から離れることなどの原因に対する対応が必要である。





●うつ病分類


うつ病などのうつ症状を呈する精神疾患の分類方法は多様である。



【操作的診断基準(DSM-IV, ICD-10など)による分類】


1980年にアメリカ精神医学会が「精神障害の分類と統計の手引第3版(DSM-III)」を発表し、「うつ病性障害」を、ある程度症状の重い「大うつ病」と、軽いうつ状態が続く「気分変調症」に二分した。


原因による分類・定義が現時点では困難であるため、1994年に発表された「精神障害の診断と統計の手引き第4版(DSM-IV)」「疾病及び関連保健問題の国際統計分類 第10版(ICD-10) 第5章 精神および行動の障害」でも、基本的にはDSM-IIIのうつ病性障害の診断分類の構成が継承されている。




【古典的分類】


古典的分類(従来診断)では、疾患の成因についての判断が優先され、「心理的誘因が明確でない内因性うつ病」と、「心理的誘因が特定できる心因性うつ病」の二分法が中心となっている(狭義には前者が“うつ病”とされ、心因性のものは「適応障害」などに分類されることも多い)。


操作的診断基準は、診断一致率の高さなどのため研究や統計に有用と考えられ、うつ病に関するほとんどの研究・統計にはDSM-IVやICD-10が使用されている。


一方、臨床場面では心理的誘因の評価が治療において重要であり、従来の枠組みによる考え方が有用な場合もある。


例えば、“心因性のうつ”では、原因から遠ざかれば一晩で元気になる可能性もあり、治療や環境変化などへのレスポンスが大きく異なっている。




【重症度による分類】


DSM-IVにおいては、大うつ病性障害の診断を満たすものについて、さらに、「軽度」(いくつかの愁訴が最低限の基準に該当する)、「中等度」、「重度」(社会的や職業的能力を妨げている)に分類される。


「精神病性の特徴(妄想・幻覚など)を伴うもの」(一般に「精神病性うつ病」とも呼ばれる)は「重度」にランクされる。


症状が改善して診断基準を満たさなくなったものの、一部の症状が残存しているものを「部分寛解」という。




【病相の回数による分類】


うつ病相が1回のみの単一エピソードうつ病に対して、うつ病を繰り返すものを反復性うつ病という。




【治療反応性による分類】


DSM-IVなどには定義されておらず、基準は曖昧であるが、研究などでは「少なくとも2つ以上の抗うつ薬を十分な量・長期にわたり投与しても症状が改善しないケース」を治療抵抗性うつ病(英語版)あるいは難治性うつ病ということが多い。




【病前性格による分類】


心理学的成因仮説の代表は、病前性格論である。


かつてうつ病にかかりやすい患者の病前性格としてメランコリー親和型性格者が多い事が統計的に確認されていたが、現代ではうつ病概念の拡大や社会状況の変化に伴い、うつ病に特異的な病前性格は見いだせなくなっている。


メランコリー親和型性格は1961年にテレンバッハが提唱したもので、秩序を愛する、几帳面、律儀、生真面目、融通が利かないなどの特徴を持つ。


内因性うつ病はこの対応を指す。


主として反復性のないうつ病を呈するとされる。




循環性格はエルンスト・クレッチマーが提唱したもので、社交的で親切、温厚だが、その反面優柔不断であるため、決断力が弱く、板挟み状態になりやすいという特徴を持つ。


躁うつ病の病前性格の一つであるとされる。




執着性格は1941年に下田光造が提唱したもので、仕事熱心、几帳面、責任感が強いなどの特徴を持つ。


反復性うつ病ないし躁うつ病の病前性格の1つであるとされる。




ディスチミア親和型は2005年に樽味伸が提唱したもので、メランコリー親和型と比してより若年層に見られる。


社会的役割への同一化よりも、自己自身への愛着が優先する。


また成熟した役割意識から生まれる自責的感覚を持ちにくい。


ストレスに対しては他責的・他罰的に対処し、抱えきれない課題に対し、時には自傷や大量服薬を行う。


幼い頃から競争原理が働いた社会で成長した世代が多く、現実で思い通りにならない事態に直面した際に個の尊厳は破れ、自己愛は先鋭化する。回避的な傾向が目立つ。

  ディスチミア親和型 メランコリー親和型
 年齢層 青年層 中高年層
 関連する気質スチューデント・アパシー
退却傾向と無気力
執着気質
メランコリー性格
 病前性格「自己自身(役割ぬき)への愛着
規範に対して『ストレス』であると抵抗する
秩序への否定的感情と万能感
もともと仕事熱心ではない
社会的役割・規範への愛着
規範に対して好意的で同一化
秩序を愛し、配慮的で几帳面
基本的に仕事熱心
 症候学的特徴不全感と倦怠
回避と他罰的感情(他者への非難)
衝動的な自傷、一方で「軽やかな」自殺企図
焦燥と抑制
疲弊と罪業感(申し訳なさの表明)
完遂しかねない「熟慮した」自殺企図
 薬物への反応多くは部分的効果に留まる(病み終えない)多くは良好(病み終える)
 認知と行動特性どこまでが「生き方」でどこからが「症状経過」か不分明疾病による行動変化が明らか
 予後と環境変化休養と服薬のみではしばしば慢性化する
置かれた場・環境の変化で急速に改善することがある
休養と服薬で全般に軽快しやすい
場・環境の変化は両価的である(時に自責的となる)

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